研究課題/領域番号 |
19H04251
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高柳 栄子 東北大学, 理学研究科, 助教 (40729208)
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研究分担者 |
井龍 康文 東北大学, 理学研究科, 教授 (00250671)
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
若木 仁美 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 短期研究員 (20817043)
石川 剛志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究所長 (30270979)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (30509724)
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究員 (50548188)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 北太平洋亜熱帯モード水 / 氷期 / 間氷期 / 琉球列島 / 腕足動物 / 炭素同位体比 / 酸素同位体比 / 古海洋環境復元 |
研究実績の概要 |
過去の亜熱帯モード水の分布・物理・化学的性質を再現性高く復元するためには,現在の亜熱帯モード水影響下の現生生物・準化石の群集組成・地球化学データと実際の海洋観測データおよび水塊構造を比較し,亜熱帯モード水の分布・組成を定量的に評価できる手法を作成し,それを化石試料に応用する必要がある.2020年度は,2019年度に現生試料を用いて確立した手法を琉球列島周辺海域より得られた腕足動物の準化石に応用し,過去約2万年間の亜熱帯モード水の物理・化学的性質(水温・塩分・溶存酸素濃度・炭酸系など)および分布と琉球列島中層域の水塊構造の時系列変化を検討した.具体的には,2019年度に確立したB. lucida準化石が1)合弁試料,2)離弁試料,3)破片試料だった場合に分けたサンプリング法に基づいて粉末試料を作成し,その炭素・酸素同位体分析,微量金属元素分析,放射性炭素年代測定などを行った.また,琉球列島周辺の表層堆積物のネオジム・ストロンチウム同位体比も検討した.その結果,B. lucida準化石の炭素・酸素同位体比から過去2万年間の水温・塩分,溶存無機炭素濃度の空間分布の変化を部分的に復元することができた.また,同準化石の微量金属元素濃度分析は,同一試料に物理・化学クリーニングを行い,その必要性について検討している.琉球列島周辺の表層堆積物のネオジム・ストロンチウム同位体比を分析した結果,沖縄本島周辺と八重山諸島周辺とで,亜表層水の海水の起源が異なる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に現生試料を用いて確立した手法を琉球列島周辺海域より得られた腕足動物B. lucidaの準化石に応用し,同準化石の化学組成から実際の復元を行う応用研究を予定通り遂行できているため,本研究はおおむね順調に進展している.特に,同一手法を用い,放射性炭素年代にて「modern」とされた試料の炭素・酸素同位体比から復元した水温・塩分,溶存無機炭素濃度が,現在の北太平洋亜熱帯モード水の水温・塩分,溶存無機炭素濃度の観測記録とよく一致し,かなり高い精度・確度でそれぞれの環境因子を復元できていることを確認できた点は成果として大きい.これにより,過去2万年間の水温・塩分,溶存無機炭素濃度の空間分布の変化の復元を確信をもって進められている.また,同準化石の微量金属元素濃度分析は,同一試料に物理・化学クリーニングを行い,それぞれの処理法と処理前・処理後の値の比較を丹念に行っており,クリーニングをしなくても初生的な微量金属元素濃度の値が得られる見込みが立ってきた.
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今後の研究の推進方策 |
復元している水温・塩分,溶存無機炭素濃度の時空間分布の解像度がまだ十分に高くないため,引き続き,古環境記録の蓄積を行なっていく.また,溶存無機炭素濃度などの変動要素を今後検討していくにあたり,北太平洋亜熱帯モード水の炭酸系(pH,炭酸イオン濃度など),水温,塩分を個別に復元していく必要があるため,どの化学組成を用いるのが最適かを検討した上で各々の環境因子の復元を実施していく予定である.特に,これまで得られた成果から,B. lucida準化石の微量金属元素濃度を用いた水温の個別復元が重要な位置付けであると考えられる.そして最終的には,復元した環境因子を用いてモデル計算などを行い,過去2万年間の北太平洋亜熱帯モード水の物理・化学組成の変化とその組成変化を引き起こした要因を特定していく予定である.
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