研究課題/領域番号 |
19H04253
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
持田 陸宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (10333642)
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研究分担者 |
松井 仁志 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (50549508)
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
大畑 祥 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 助教 (70796250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機エアロゾル / 吸湿性 / 化学構造 / 起源 |
研究実績の概要 |
都市域で採取された大気エアロゾル試料に含まれるフミン様物質(HULIS;固相抽出法により得られる有機物の画分)を微粒子化して吸湿特性測定用タンデムDMAに導入し、水蒸気未飽和の条件下におけるHULIS粒子の吸湿成長度の測定を行った。そして、HULISの吸湿性パラメータの値を導出し、HULISの酸素/炭素比や、HULISの質量スペクトルに対するPositive Matrix Factorization(PMF)解析で得られる因子との関係を得た。後者のPMF因子は、有機エアロゾルの起源と関係していると考えられ、得られた結果は、HULISの吸湿性と起源の関係について知見を与えるものと言える。また、森林域で採取されたエアロゾルに含まれる水溶性有機物と非水溶性有機物、そして水溶性有機物から得られる2つの画分(高極性有機物およびHULIS)の微粒子を生成し、エアロゾル質量分析を行うことでそれらの画分の質量スペクトルを得た。そして、試料に既知量のフタル酸を添加して質量スペクトルを取得する方法を用いて、これらの有機画分の大気濃度を計算した。大気有機エアロゾルの化学構造に関する解析の一環として、名古屋で採取された大気エアロゾル試料の三次元蛍光分析も進めた。 そのほか、全球エアロゾルモデルの改良について検討を進めた。また、都市エアロゾルに含まれる有機画分(高極性有機物・HULIS・非水溶性有機物)と有機エアロゾルの起源(バイオマス燃焼など)の関係を報告した原著論文を学術誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの重要な成果として、都市域の大気有機エアロゾルを構成する画分に対して有機物の起源に関する知見を得たこと、また、そのうちのHULIS画分を対象にその化学構造と吸湿性の関係の理解に繋がる実験データを得たことが挙げられる。高極性有機物の吸湿性の定量が課題として残り、また、大気エアロゾルのタイプを絞って吸湿性解析を進めている状況だが、本研究の目的に強く関わる重要な成果が得られている点を考慮し、当該区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
大気エアロゾル試料の分析に基づく取り組みを継続するほか、本研究や先行研究で大気エアロゾル試料から得た知見を大気モデルにおいて考慮する方法について検討を進める。
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備考 |
佐藤陽祐,當房豊,山下克也,荒木健太郎,岩崎杉紀,三隅良平,大竹秀明,茂木信宏,齋藤泉,川合秀明,中島孝,中野諭,森樹大,橋本明弘,郭威鎮,勝山祐太,瀬戸里枝,古藤慎之,山田怜史,折笠成宏,田尻拓也,遠藤幸生,近藤誠,大畑祥,松嶋俊樹:2019年度「エアロゾル・雲・降水の相互作用に関する研究会」報告, 天気, 67, 665-671, 2020.
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