研究課題/領域番号 |
19H04255
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂本 陽介 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (50747342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光化学オキシダント / RO2ラジカル / エアロゾル / 取り込み反応速度 / HOxサイクル / オゾン生成速度 / PM / 不均一反応 |
研究実績の概要 |
2019年7月末から2週間にわたり神奈川県川崎市の湾岸工業地帯において開かれた大規模観測キャンペーンにおいて得られた実大気エアロゾルによるHO2ラジカル取り込み速度を用い、当研究課題により提案されたエアロゾルへの取り込み速度を組み込んだオゾン生成へのVOC、NOxの感度解析を行い、その結果について論文投稿を行いAtmospheric Environment誌およびAtmospheric Chemistry and Physics誌に採択・掲載された。 RO2ラジカル取り込み速度測定をおこなうための二次有機エアロゾル生成条件を決定するため、国立環境研究所のスモッグチャンバーを用い、各有機化合物の光化学酸化による二次有機エアロゾル生成実験をおこなった。その実験の中で、二次有機エアロゾルの種になる準不揮発性有機化合物のチャンバー壁面への沈着が二次有機エアロゾル生成の競合プロセスになっている可能性が示唆された。この結果はAtmospheric Environment誌に採択・掲載された。 CH3O2および代表的な大気アルケンであるプロペンおよびイソプレン由来のRO2について海塩エアロゾルに対する取り込み速度の測定を行った。取り込み速度の測定に成功すると共に、取り込み速度にはR依存性が存在することが示唆された。更に京都大学キャンパス内において、大気エアロゾルによるHO2およびイソプレン由来のRO2取り込み速度直接測定を行った。イソプレン由来のRO2については室内実験・大気観測の結果をまとめ論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的はレーザーポンプ・レーザー誘起蛍光検出(LP-LIF)法を用い,RO2のエアロゾルへの取り込み係数を世界に先駆け測定し、そして得られる取り込み係数を基にボックスモデル計算を行いエアロゾル取り込み過程がHOXサイクルの回転効率に与える影響を計算し,そのオキシダント・二次エアロゾル生成における潜在的インパクトを評価することである.前年度までにLP-LIF法を用いた各種RO2の反応性測定システムの検討は終了していた。それを踏まえ本年度では各種標準エアロゾルによるイソプレン由来のRO2の取り込み係数の決定を行い、また、昨年度においてエアロゾル濃度増幅法であるVACESと組み合わせることで得られた京都市における実大気エアロゾルの取り込み速度測定の解析を終了させ取り込み係数を決定した。これらの結果を用い前年度までに開発したオゾン生成速度解析モデル計算を行うことで、RO2の取り込み過程は京都のような比較的清浄な都市郊外においては2%~9%のオゾン生成速度抑制効果を持ちうることが判明した。これらの結果をまとめ論文投稿をおこなっている。イソプレン以外のRO2(メタン、エタン、プロパン、プロペン由来)についても室内実験を進めている。したがって、本研究課題の最終目標であったRO2の取り込み係数決定とそのインパクト評価は、一つの観測地に対してではあるが、達成されており、また今年度はさらに実大気観測および室内実験を拡張し進める予定であるため、全体としての進捗状況は当初の計画以上に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に達成したイソプレン由来のRO2の取り込み係数測定に引き続き、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロペンや,植物から出るテルペン類由来のRO2などの取り込み係数測定を行う。CH3O2およびC2H5O2などのアルカン由来のRO2については、検出の際の化学変換において酸素濃度がラジカル計測の感度に影響することが判明したため、化学変換条件の調整の後取り込み係数測定を行う。国立環境研究所のスモッグチャンバーを用いて、有機エアロゾ ルの中でも特にPM2.5の主成分である二次有機エアロゾルについても本手法を拡張し、各種RO2ラジカルの取り込み速度測定を行う予定である 。更に室内実験をすでに行っているプロペン由来のRO2に着目し、イソプレン同様に外気観測を行う予定である。本課題で得られるすべてのデータを統合しより一般化されたオキシダント生成速度や二次エアロゾル生成への潜在的インパクトの評価を行う予定である。
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