研究課題/領域番号 |
19H04263
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩崎 拓平 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (90569849)
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研究分担者 |
浜崎 恒二 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80277871)
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 助教 (80795055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 北極海 / 南極海 / 亜熱帯海域 / 窒素固定 |
研究実績の概要 |
本年度は北極航海に参加し、窒素固定の観測を実施した。観測海域はチュクチ海及びビューフォート海であり、計13点で観測を実施した。観測期間は2020/10/1-21である。観測海域では表面において広く硝酸塩濃度が枯渇した海域が見られたが、チュクチ海及びビューフォート海共に局所的に硝酸塩濃度の高い海域も観察された。局所的な硝酸塩濃度の上昇は冬期に向かって活発になる鉛直混合の影響が考えられた。窒素固定はほとんどの測点で検出されず、顕著なシグナルが見られたのは3測点に留まった。研究代表者はこれまで2015年、2016年、2017年と北極海の同じ海域で窒素固定の観測を実施しており、過去の観測では、ほぼ全ての測点で窒素固定を検出していた。この違いとして考えられる要因は観測を行った季節である。2015年、2016年、2017年はそれぞれ、9/6-10/3、8/30-9/21、8/27-9/20であり、2020年の観測期間と約1ヶ月ほど異なる。過去の観測では表面における局所的な硝酸塩濃度の上昇はチュクチ海の陸棚域にのみ観測されていたが、今回の観測ではビューフォート海においても観察された。また全ての航海で基礎生産の測定を同時に行っていたが、2020年の基礎生産の0.1%光量層までの水柱積算値は、他の年の値と比較して有意に低くなっていた(Mann-Whitney U test)。基礎生産が他の年と比べて低かった要因は光量が低かったことが要因として考えられる。北極海では夏季から秋季にかけて急激に光量が低下するからである。2020年の観測で窒素固定がほとんど検出されなかった要因は不明であるが、これらの観測から北極海の窒素固定には季節性がある可能性が示唆された。今後はこの季節性の要因を明らかにすると共に、同航海で得られたDNAサンプルを解析から観測中に存在していた窒素固定生物を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた北極海における観測航海に参加し、窒素固定活性の測定及びそれに関わる環境サンプルの採取を行うことができた。また陸上研究室において窒素固定活性のサンプル分析を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで南極海、亜熱帯、北極海で採取したDNAサンプルを用いてメタゲノム解析を実施する。得られたデータからMAG(metagenome-assembled genomes)を構築し、窒素固定生物のゲノムを抽出し、比較ゲノム解析を行う。これによって極域と亜熱帯の窒素固定生物の代謝の共通点や相違点が明らかになることが見込まれる。
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