研究実績の概要 |
近年、鉄の蓄積と活性酸素種(ROS)増大に起因するフェロトーシスと呼ばれる細胞死が報告され、がん治療への応用が期待されている。しかし、この細胞死の詳細なメカニズムや、効率的な誘導法、ならびに特異的な検出法は明らかにされていない。本研究では、「分子機構に基づいた効率的な手法で、イメージング等検出技術に裏付けされた条件において、鉄依存性細胞死フェロトーシスをがん治療のアプローチに適用することが可能か?」という問いを設定し、①様々な作用点を検討することで効率的なフェロトーシス誘導法を開発すること、②分子シグナルと生理活性物質の変化を明らかにすること、③非侵襲的なフェロトーシスイメージング法を開発することを目的とする。 2021年度では、③に関して、細胞のトランスフェリンレセプターTfRの発現レベルとフェロトーシスとの間に相関がある知見に基づき、トランスフェリンTfを基本構造とした核医学プローブの作製を行った。リンカーとしてp-isothiocyanatobenzyl-1,4,7-triazacyclononane-1,4,7-triacetic acid (NOTA)を利用し、鉄非結合apoTfを68Gaで標識した。その後、塩化鉄と反応させ、鉄結合68Ga-holoTfプローブを作製した。TfR1の発現レベルの異なる2種類の腎がん細胞A498(TfR1低発現)と786-O(TfR1高発現)の細胞への、作製したプローブ68Ga-NOTA-hTfの取り込み試験を行ったところ、786-Oでその集積量が有意に高かった。フェロトーシス誘導剤エラスチンへの感受性もまた786-Oが高かったため、フェロトーシスが誘導されやすいがんの検出法として、本手法が利用できることが明らかとなり、PETイメージングプローブとして利用できる可能性が示された。
|