研究課題
本研究では、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)のより高次な調節機構の解明に向けて、近年わかってきている断片的な知見をより時空間的に統合された理解へと変換させること、およびさらなる未知の制御因子を同定することを目的として、ケミカルバイオロジーを利用した2つのアプローチから研究を進めている。(1)フォワードケミカルジェノミクスのアプローチこれまでに我々が同定した3種類のNER阻害化合物のうち、新規の2つの化合物について、作用メカニズムの解析を行った。これまでの結果から、DNA損傷認識に働くXPCやDDB2のDNA損傷部位への集積は正常である一方、その後に働くTHIIHの集積が見られないことをふまえて、DDB2やXPCの翻訳後修飾状態、TFIIHサブユニットの細胞内レベルおよびXPCとの相互作用について、化合物処理の影響を調べたところ、TFIIHサブユニットの細胞内レベルには大きな変化はなかったが、その他については変化が見られ、特にXPCの翻訳後修飾とTFIIHとの相互作用との関係について、現在、詳細に調べている。②「DNA損傷プローブ」を利用したアプローチUVA照射依存的にDNAに架橋を形成するangelicin(psoralen類縁体)と、クリック反応に必要なアルキンまたはシクロオクチンをリンカーでつないだ「DNA損傷プローブ」を用いて、DNA損傷付近に形成されるNER中間複合体の単離を試みているが、やや難航している。現在、「DNA損傷プローブ」の改変を試みているとともに、別のアプローチとしてNER中間複合体のタンパク質を標識する方法を新たに導入し、この方法では単離したタンパク質の中にコアNER因子が含まれていることが確認できている。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、(2)「DNA損傷プローブ」を利用したアプローチで少し問題が生じているが、プローブの構造の改変による解決を試みつつ、新たにバックアップとして導入した方法で良好な結果が得られており、仮に前者がうまくいかなかったとしても、当初の目標に向かうことに関して支障はないと考えている。もう一つの(1)フォワードケミカルジェノミクスのアプローチについては、新規NER阻害化合物のNER因子への作用の一端が捉えられたことから、順調に進んでいると考えられる。
(1)のアプローチに関しては、捉えた化合物の作用を手掛かりとして解析を進めていく予定であり、NER反応におけるXPCとTFIIHの相互作用に関して新たな知見が得られることを期待して、研究を加速させる。一方、(2)のアプローチに関しては、「DNA損傷プローブ」の改良と新しい方法による解析を同時に進行させ、NER阻害化合物との併用によりNER中間複合体の単離を早期に実現させる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~iden/index.html