研究課題/領域番号 |
19H04269
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中田 慎一郎 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (70548528)
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研究分担者 |
宇井 彩子 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (00469967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNA損傷 / RNF8 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
DNA2本鎖損傷(DSB)応答(DDR)において、ユビキチン化はリン酸化と並び中心的な翻訳後修飾である。ここ約10年間に様々な研究成果が発表されてきたにもかかわらず、RNF8-RNF168依存的なDDRには、いくつかの根本的な謎が未解明のまま残されている。 本研究ではRNF8-RNF168経路における未解明事項の解明を目的としている。この目的を達成するために、クロマチンテザリングの実験系を用いることで、RNF8の真のターゲットを同定し、これを手がかりに研究を展開するべく実験を進めた。 特定のクロマチンにRNF8をテザリングさせるために、TetRと蛍光物質Cherryのついたプラスミドを作成した。このプラスミドを、TREサイトを約200コピーゲノムに持つ細胞にトランスフェクションし、クロマチン部位に結合するタンパク質、あるいはヒストン修飾因子などを免疫染色で検出した。その結果、RNF8経路のシグナルに関わる既知因子がクロマチンに結合することが観察できた。生理的なDDRを研究するため、RNF8恒常発現細胞の樹立を試みた。しかし、繰り返し樹立を試みたものの、実施したすべての実験において、恒常発現細胞の樹立に至らなかった。一過性にRNF8が過剰発現の状態となることが細胞毒性を誘導することが原因であると考えている。このため、当初予定していたように研究を遂行することが困難となった。そこで、当初、上記の手法により候補遺伝子を選択してから実施する予定であった遺伝子ノックダウン実験を、文献やデータベースより候補遺伝子を抽出して実施する方法へと変更した。10弱の候補遺伝子を絞り込んだ後、それらに対する特異的なsiRNAを複数作成し、遺伝子の一過性ノックアウトによる相同組み換えおよび非相同末端結合への影響を測定した。その結果、複数の遺伝子において、DNA修復効率の顕著な低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
E3ユビキチンリガーゼの過剰発現状態でDDRを解析すると、生理的にはほとんどおこらないシグナルが強調されてしまい、擬陽性の結果を導く恐れがある。そのため、テザリング実験においても、その後予定していたシグナル解析・タンパク複合体解析においても、生理的なレベルでRNF8を恒常発現する細胞を樹立することは必須の条件であった。しかし、繰り返し樹立を試みたにもかかわらず、樹立に至らず、研究の進行は遅れることとなった。樹立に至らなかった原因は、蛍光タンパクを融合したRNF8の一過性高発現が強い細胞毒性をもたらしたためと考えており、解決は非常に困難であると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載したように、データベース等によりRNF8との関連が予想される遺伝子のノックダウンを実施、複数の遺伝子ノックダウン細胞において、DNA修復効率の抑制が認められた。当初の計画通りではないものの、最終的な研究目的を達成するための知見が得られている。今後、これらの遺伝子が真にDNA修復を制御する因子であることを実証するため、ノックダウン細胞に当該遺伝子の発現を回復させる、機能ドメインを欠く当該遺伝子発現を発現させる等の処理の上、DNA修復効率の変化を解析する。これらの遺伝子のDSBへの局在を蛍光免疫染色により解析、さらにその局在におけるRNF8の役割を解析していく。
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