研究課題/領域番号 |
19H04272
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
頼 泰樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30503099)
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研究分担者 |
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (20391287)
古川 純 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40451687)
永澤 奈美子 (佐藤奈美子) 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00535289)
永澤 信洋 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90599268)
鈴木 龍一郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70632397)
増田 寛志 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40605268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セシウム / 輸送経路 / カリウム / 輸送体 / OsHAK1 / OsHAK5 / 導管 / ローディング |
研究実績の概要 |
2011年の福島第一原発の事故による放射性セシウム(Cs)の土壌汚染が問題となっている。放射性Csは土壌に強く吸着するが、その一部は植物の根から吸収され、農産物の放射能汚染をもたらす。Cs+は、水稲ではK+輸送体であるOsHAK1から吸収されることが明らかになっている。 今年度は水稲において、OsHAK1と同じ高親和性K輸送体であるOsHAK5および低親和性のチャンネルタイプであるOsAKT1のCs輸送へのかかわりについて調べた。 OsHAK5およびOsAKT1をノックアウトしたTosラインおよびその2系統とOsHAK1との2重変異体を交配により作成した。 これらを幼植物を実験材料として、K濃度を多段階で変えた水耕栽培にCs+を添加し、水耕液からのCs+の吸収を調べた。その結果、OsHAK5およびOsAKT1のノックアウトにより、Cs+の吸収量は変化しなかった。 OsHAK5はK+の導管ローディングを担っているとされ、また、OsHAK1と遺伝子配列もほぼ同じであることからCs+の輸送能を持つと想定したが、欠失変異体はCs+吸収変化を起こさなかった。そのため、Cs+は根に吸収されたあとにK+とは異なる経路で導管にローディングされ地上部へ輸送されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究により、Cs+の輸送経路として可能性が高いと考えていたOsHAK5についてそのCs+輸送における役割を解析したが、OsHAK5の欠失によってイネのCs動態は変化せず、OsHAK5はイネ体内のCs+輸送には関与していないことが示唆された。 この結果はOsHAK5の関与を想定した実験結果としてはネガティブではあるが、別の輸送体によるCs+輸送が考えられた。 イネのCs+吸収は根に取り込まれた後、地上部への輸送速度がK+との比較で遅い。そのため、K+とは異なる輸送経路で地上部へ輸送されていることが考えられ、その点からこの毛㏍は妥当であると言える。 この結果から、今後の研究の方向性はK+輸送の主要な輸送体以外で検討するほうが良いことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究の進め方として、Cs+の導管へのローディングに関して、OsHAK5以外のK輸送体による関与を解析していくこととする。しかし、Tosラインなど欠失変異体を用いた実験は遺伝子資源の入手、ホモ化などの工程を経る必要があること、また数多くあるK輸送体についてはすべての欠失変異体がTosラインで作成されておらず、そのため、遺伝子編集によるノックアウト系統の作出を行うことも必要となる。現行で入手したK輸送体の変異体は遺伝子検定後増殖させつつ、その間にOsHAK1以外の変異体による根へのCs+吸収について解析を行うこととする。
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