研究課題/領域番号 |
19H04278
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
紙谷 浩之 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (10204629)
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研究分担者 |
鈴木 哲矢 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20573950)
小松 康雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究部門長 (30271670)
河合 秀彦 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (30379846)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNA損傷 / 8-hydroxyguanine / 遠隔作用変異 |
研究実績の概要 |
(1) ヒト細胞における 8-OH-Gua による遠隔作用変異誘発:新たに構築したレポーター遺伝子アッセイシステム(8-OH-Gua を supF 遺伝子中と、supF 遺伝子近傍の上流や下流に導入することにより、遠隔作用変異を選択的に検出できるシステム)を用いて、8-OH-Gua による遠隔作用変異誘発を調べた。現在のところ、3者の変異の分布には大きな差が観察されていない。しかし、生じた遠隔作用変異(G:C対)の隣接塩基を調べたところ、いずれの場合も 5'-NGA-3' 配列に選択的である傾向を示した。 (2) 8-OH-Gua による遠隔作用変異誘発と DNA 修復酵素との関連:OGG1 をノックダウンしたヒト細胞に8-OH-Gua を導入したところ、遠隔作用変異が減少した。これは、OGG1 が開始する塩基除去修復プロセスが、遠隔作用変異誘発に寄与している可能性を示す。 (3) Abasic site analogueによる遠隔作用変異誘発:8-OH-Gua の修復時の中間体となるabasic site の安定な analogueを用い、遠隔作用変異が誘発されるかを調べた。その結果、G:C対に遠隔作用変異が誘発されること、及び、その遠隔作用変異が 5'-NGA-3' 配列に選択的であることを明らかにした。 (4) 遠隔作用変異が生じている supF 遺伝子変異体の効率的選択法の確立:本研究では、レポーター遺伝子として supF 遺伝子を用いるが、supF 遺伝子変異体の選択培地に野生型の遺伝子を持つ菌が生えることを完全には排除できなかった。しかし、新規の大腸菌株を作製することにより、遠隔作用変異が生じている supF 遺伝子変異体を効率的に選択する方法を確立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により、概ね順調と判断している。(i) 遠隔作用変異が生じている supF 遺伝子変異体の効率的選択法の確立することに成功し、(ii) abasic site が 8-hydroxyguanine が誘発する遠隔作用変異と同様の配列選択性で遠隔作用変異を誘発することを見出した。(ii) に関しては、8-hydroxyguanine が誘発する遠隔作用変異に abasic site 生成が関与している可能性を示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
WRN をノックダウンさせたヒト細胞を用いて、8-hydroxyguanine による遠隔作用変異誘発を調べるとともに、OGG1 などのDNA 修復酵素や 5'-NGA-3'(5'-TCN-3') 配列選択的に変異を誘発するとされるシチジンデアミナーゼと遠隔作用変異の関連を調べる。
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