研究実績の概要 |
IL-1βノックアウトマウスを用いた検討では、10週齢のIL-1β欠損マウスおよび野生型マウスを3群に分け、アクリルアミドを12.5, 25 mg/kg を強制経口投与により28日間曝露した。IL-1βノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、大脳皮質ノルアドレナリン神経密度をより大きな程度減少させた。野生型マウスでは、アクリルアミドへの曝露がNrf2、HO-1, NQO1、GST-M 、IL-6 、NFκB遺伝子発現を誘導した。オントロジー解析では、IL-1β欠損がoxidative phosphorylation, AD, PD and ALS 表現型に関する遺伝子発現を増加させた。本研究は、IL-1βの存在がアクリルアミドによる神経毒性に対して、酸化ストレス、NrF2/NF-κB経路、p38MAPK / p21経路を通じて、保護的に働くことを示した。脳におけるカスパーゼ1遺伝子発現はIL-1βノックアウトマウス、野生型の両方においてアクリルアミド曝露により誘導された。ニューロンとミクログリアとの共培養系を用いた検討では、ミクログリアにおいてアミロイド前駆タンパク遺伝子の発現が誘導された。一方、ニューロンにおいてはカスパーゼ1、4、8がアクリルアミド曝露により誘導された。カスパーゼ6および12も誘導される傾向にあった。カスパーゼ6はエフェクターカスパーゼとして知られ、アミロイド前駆タンパクの開裂を行い、アミロイド蓄積に関与するとともに、神経変性に貢献するとの報告があることから、本研究は環境親電子性物質への曝露がアミロイド蓄積を誘導し、アルツハイマー病の発症に対して促進的に働くことを示唆する。
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