研究課題/領域番号 |
19H04282
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40434071)
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研究分担者 |
金子 美樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10795735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二酸化炭素吸入暴露 / 環境衛生 / 生体信号解析 |
研究実績の概要 |
1. 室内の二酸化炭素濃度を制御可能な実験用チャンバーの性能向上 前年に,空気中の二酸化炭素濃度のセンサ情報に基づき簡易的に換気ファンを作動させ二酸化炭素濃度をほぼ一定レベルに維持する実験用チャンバーを構築した.今年度は,換気能力を向上させ,二酸化炭素濃度レベルの制御性能を向上させた.さらに,室内の気温についても制御可能にした. 2. 生体信号の解析法の開発 平衡感覚などの機能評価を可能にするため重心動揺などの2次元面上のゆらぎを解析する方法を新たに開発した.この方法は,2次元軌道の非一様性を解析することで,元信号に含まれる特徴的方向成分を検出することができる.また,前年度に開発した長時間相互相関解析の方法を,心拍変動,呼吸変動,血圧変動の相互作用の解析に応用した.その結果,心拍変動には呼吸振幅の影響による長時間相互相関成分が存在するが,呼吸間隔(呼吸数)の情報は伝わっていないことが明らかになった.一方で,心拍変動と血圧変動の間には,長時間相互相関が見られることが明らかになった. 3. 実世界労働環境の評価 二酸化炭素濃度が1000ppm以上に制御されている、野菜工場において働く作業者の心拍数,身体活動量を計測し,それらのデータを分析した.2020年度は,作業者ごとの特性を評価するため,作業強度に対する心拍数の応答を評価した.その結果,作業負荷のない状態での心拍数が高い作業者ほど,アンケートにおいて疲労を感じていると回答する傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の対策として,新規の実験が大学の方針により中止された期間があったため,室内での被験者実験を予定通り実施することができなかった.この点を補うために,実験用チャンバーの改善と生体信号の解析法の開発に注力したが,実験の計画については,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 室内二酸化炭素濃度が認知機能および生体機能に与える影響の評価 室内二酸化炭素濃度を制御可能な実験用チャンバーを用いた被験者実験を実施する.室内二酸化炭素濃度を500ppmから,2000ppm程度まで変化させ,認知機能を評価する。さらに,心拍数や呼吸数などの生体信号の特性変化を評価し,眠気や倦怠感の発生を検証する.本研究で明らかになった,比較的低濃度の二酸化炭素の吸引暴露の影響を整理し,論文としてまとめる. (2) 身体活動量で調整した心拍変動指標の開発 従来の心拍変動指標は身体活動量の影響が考慮されていない.そこで,本研究では,身体活動量の影響を減じることが可能な新たな心拍変動指標を開発する. (3) 実労働環境の評価 ウェアラブル生体センサを活用し,自動車工場,鋳造工場,野菜工場などにおいて,作業者の生体情報および環境因子を計測し,分析する。計測された生体情報に基づき,作業負担,疲労などのを評価できる時系列解析法を開発する.実際の労働環境のリスクは,二酸化炭素の吸引暴露だけではなく,暑熱ストレス,作業負荷,疲労,寝不足なども想定される.本計画では,生体への影響の評価を簡便に実現するための方法論の構築を目指す.
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