研究課題/領域番号 |
19H04283
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
池島 耕 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (30582473)
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研究分担者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 2次元分光イメージング / 中赤外分光 / 黒色プラスチック |
研究実績の概要 |
本研究では、河川や海洋の環境と生物への影響が懸念されているマイクロプラスチック(Microplastics : MP)汚染の実態や生物への影響について研究の基盤となる、迅速な分析手法の開発を目指している。本年度は初年度の結果を受け、従来法であるFPA-FT-IRよりも、短時間かつ近赤外帯では困難な暗色MPsのポリマー種の弁別が可能な分光器を実現に向け、耐振動性が高い結像型二次元フーリエ分光法と非冷却型の受光素子であるマイクロボロメーターを組み合わせた長波長赤外帯分光エリアイメージャー(プロトタイプ器)を構築した。その特徴として、長波長赤外帯を用いることで、白色・黒色プラスチックの分光スペクトル形状や受光素子の画素数などに優位性がある。さらに、マイクロボロメーターは,サーモグラフィーに広く用いられおり、FPA-FT-IRのFPAより低感度であるが,安価かつ高画素数なものが市販され,1画素あたりの視野範囲が同一の場合,FPA-FT-IRよりも一度の測定領域を広くとれるため,採用により測定時間の短縮が期待できる。 また、本年度は上記のプロトタイプの確立を受けて、2次元中赤外分光イメージング装置の実機を作成した。実機により各種プラスチックの測定を行い、測定条件や分別可能なプラスチックの種類やサイズの検討を進めた。身の回りでよく使われているPP, PS, PE, PET, PVC, アクリル樹脂などは、未劣化のサンプルを赤外照明を下方から当て透過測定した場合、製品によっては分別が難しい場合があるか、およそ分別が可能であることがわかった。ただし、環境中で劣化したサンプルおよび、フィルター上に捕集したマイクロプラスチックの測定において同様な分別が可能であるか、さらに条件の検討をすすめる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は本年度の後期には、分光装置(実機)を用いて,サンプルのスペクトルを取得する測定条件の改良を進めスペクトルデータから特徴的なピークを選び出しクラスタリングするためプログラムを作成する計画であったが、新型コロナウィルス感染症の影響による電子部品の調達の遅れもあり、実機の作成が遅れ、環境中のマイクロプラスチック・サンプルの測定条件の検討までを十分に進めることができなかったため、当初計画よりもやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、分光装置(実機)を用いて,サンプルのスペクトルを取得する測定条件の改良を進める。さらに、スペクトルデータから特徴的なピ ークを選び出しクラスタリングするためプログラムを作成する。サンプル間でスペクトルのばらつきが大きい(ノイズを多く含む)場合、必要に応じて機械学習を用いた解析プログラムを作成しクラスタリングの効率と精度の向上を図る。このプログラムにより、2次元スペクトルデー タから、MPをプラスチック材別に色分けした画像データとして書き出す。次に画像データを一般的な画像解析ソフトウェアの粒子解析機能を用いて、MPの数とサイズを測定する。 さらに、環境中のマイクロプラスチックの分析では調査から分析の過程で生じるコンタミネーション(試料汚染)が大きな誤差を生じさせる可能性が明らかになってきており、本研究で開発するマイクロプラスチック分析装置と分析プロトコルにおけるコンタミネーションの可能性を実験的に計測し、防止対策を確立する。 そして、高知県を中心とした四国内の河川、河口域の環境・生物標本を採集し、本装置を用いてマイクロプラスチックを測定する。分析方法の比較として、従来用いられてきたNile-red染色による簡易検出法とフーリエ変換赤外分光顕微鏡(μFT-IR)による測定も行い、プラスチックの判別能力、精度、コスト等について評価する。それらを踏まえて、本研究による2次元中赤外分光イメージング装置を用いた、マイクロプラスチック標本の2次元スペクトルデータ計測システムとその適用方法を提案する。
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