研究課題/領域番号 |
19H04285
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60639540)
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研究分担者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
東 剛志 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (10634222)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 堆肥 / 薬剤耐性遺伝子 / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
国内の牛農場4箇所および豚農場29箇所より完熟堆肥をサンプリングし、テトラサイクリン耐性遺伝子であるtetA遺伝子のqPCRによる定量を行った。結果、豚農場の堆肥は牛農場の堆肥と比較して、高いtetA遺伝子コピー数を示した。また、堆肥中に含まれるテトラサイクリン抗菌薬濃度を調べたところ、豚農場の堆肥で牛農場に比べて高い濃度を示した。以上の結果より、圃場へ散布される完熟堆肥のうち、豚農場の堆肥は牛農場の堆肥に比べて高いtetA遺伝子量を示すことが明らかとなった。一般的に豚に対しては牛以上に多くの抗菌薬が使用されている。以上の結果は、抗菌薬の使用頻度が高い農場由来堆肥に多くの薬剤耐性遺伝子が残留し、土壌および栽培される作物への汚染リスクが高いことが示唆された。 次に国内の4つの牛農場において堆肥処理またはバイオガスプラント処理前後の廃棄物をサンプリングし、廃棄物に含まれる大腸菌量、テトラサイクリン耐性大腸菌量、tetA遺伝子量を定量した。結果、堆肥処理およびバイオガスプラント処理のいずれにおいても大腸菌量、テトラサイクリン耐性大腸菌量は減少した。減少程度はバイオガスプラント処理で堆肥処理より大きかった。また、tetA遺伝子量については、必ずしも全ての農場のサンプルで減少しなかったが、多くの場合は処理により遺伝子量が減少した。大腸菌量と同様に、減少の程度はバイオガスプラント処理でより大きかった。以上の結果より堆肥処理およびバイオガスプラント処理は、家畜糞便中の耐性菌および耐性遺伝子量を減少させ、土壌および作物への汚染リスクを減少させることが示された。また、その程度はバイオガスプラント処理が堆肥処理に比べて大きいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画通りに進行している。ただし、来年度は豚農場の堆肥を用いて試験を行う予定であったが、CSFの発生により豚農場の堆肥を入手することが困難な状況である。加えて、COVID-19の広がりにより、鶏農場も立ち入りが大きく制限される現場であり、サンプリングを実施するのが困難な状況である。そのため、今年度のサンプリングについては、予定通りに実施することが難しいことが想定されている。また、共同研究先のアメリカにおいて、耐性遺伝子の網羅的定量を実施する予定であったが、COVID-19の影響により渡航が難しいことが予想されている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに実施した牛農場堆肥の解析をNGSを用いた細菌叢解析を含めてさらに進める。耐性遺伝子の定量について、テトラサイクリン耐性遺伝子だけでなくベータラクタム耐性遺伝子の定量も実施する。また、可能であれば耐性遺伝子の網羅的定量をfluidic qPCRにより実施することを計画している。以上の結果を残留抗菌薬量の定量結果と比較解析し、その関連について明らかにする。 さらに、牛農場堆肥や排水での薬剤耐性菌/耐性遺伝子対策となる堆肥処理法を提案するため実験室内で堆肥化条件をシミュレートし、効果的な堆肥処理法を探索する。また、実際に行われている堆肥処理方の問題点について洗い出しを行うことを計画している。 また、鶏農場の実態を解明するため、鶏農場の堆肥について継時的にサンプリングを行い牛農場と同様の解析を行う。鶏の堆肥は、他の家畜に比べて長期に渡り堆積をするため、その堆積期間中の耐性菌/耐性遺伝子の性状の変化、周辺環境への影響を明らかにすることを計画している。 さらに市販堆肥についても耐性菌/耐性遺伝子について定量および性状解析を行い、市販されている堆肥を取り扱う際の耐性菌/耐性遺伝子汚染のリスクについて明らかにすることを計画している。
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