研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 ①PBDDsの生態影響試験による生態毒性評価:低臭素化ダイオキシンである1,3,7-TriBDDについて海産アミ類を用いた成長・成熟試験を実施した。実験の結果、既報における1,3,7-TriBDDの生物蓄積濃度域において、対照区と比較して有意な体長、湿重量の減少がみられ、成長への影響が認められた。以上から、海産甲殻類に対する毒性影響濃度を見積もることができた。 ②PBDDs曝露によるオミクス解析:二枚貝のイガイに1,3,7-TriBDDを曝露し、RNA-seq解析した。パスウェイ解析の結果、neurogenerationに関連する遺伝子発現変動が認められた。さらに、海産アミ類のトランスクリプトームを整備する目的として、ゲノム解析、加えて脱皮ホルモンによるRNA-seq解析を行った。ゲノム解析の結果、総塩基数約500Mbを取得し、十分ではないもののレファレンス配列の整備を進めることができた。また、脱皮ホルモンを曝露した海産アミ類のRNA-seq解析の結果、エクジステロイドに応答する初期-後期遺伝子群など脱皮関連遺伝子の発現変動について知見を得た。 ③PBDDs汚染実態:PBDDsの分析手法を確立し、生物サンプルの測定を実施した。有明海から魚類および二枚貝(イガイ、カキ)、アキアミ類を採取し、低臭素化ダイオキシンを分析した結果、魚類からは未検出であったものの、二枚貝から3臭素化体が検出された。既報の海産無脊椎動物における蓄積濃度よりも高濃度の蓄積が認められた。
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