研究課題/領域番号 |
19H04287
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
茶谷 聡 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (40394837)
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研究分担者 |
國分 優孝 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (10792533)
星 純也 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 副参事研究員 (70506617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | VOC / 個別成分濃度観測 / 排出インベントリ / 化学輸送モデル |
研究実績の概要 |
前年度の秋季調査(2019年10月)と冬季調査(同12月)に引き続き、今年度は春季調査として4月20日~22日、夏季調査として6月29日~7月1日のそれぞれ3日間、杉並区久我山、江東区新砂、大田区東糀谷、練馬区石神井町、江戸川区鹿骨の5地点において、大気の同時採取を行った。採取時間は18時~6時、6~12時、12~18時の1日3回とし、2日間繰り返して行った。採取された大気に含まれる100種類以上のVOC個別成分を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)等で同定した。これにより、1年を通して、VOC個別成分濃度の空間的・時間的・季節的な変化を明らかにすることができた。 観測を行った期間を含む2019年9月~2020年7月を対象に、領域気象モデルWRFと領域化学輸送モデルCMAQを用いた3次元大気質シミュレーションにより、大気汚染物質濃度を計算した。計算値を調査結果と比較し、VOCの成分別に濃度再現性の特徴を明らかにした。過小評価となる成分が多い一方、反応性の高い芳香族炭化水素等については、過大評価となる傾向が見られた。また、VOC濃度に対する地域別の発生源の影響を明らかにした。ほとんどの成分について、関東地方内の影響が大きかったが、炭素数の少ないアルカンやアセトンなど、大気中の寿命の長い成分については、越境輸送の影響も示唆された。アルデヒドについては、二次生成の影響も大きく現れた。さらに、大気質シミュレーションの入力データとして用いる排出インベントリデータ中の全発生源のVOC排出量を個別成分に分解し、モデルによる濃度再現性と比較することにより、観測値と計算値の乖離の要因として有力な発生源を明らかにした。これにより、排出インベントリと大気質シミュレーションの改良に向けた方向性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた4季節別のVOC個別成分濃度調査と、調査期間を含む3次元大気質シミュレーションの実行ならびに解析が計画通り完了した。
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今後の研究の推進方策 |
当初はボックスモデルによる解析を想定していたが、実大気と対比できる現実的な計算条件の確立に問題が生じたため、3次元大気質シミュレーションを用いた感度解析により、各種要因の影響解析を行う。VOC個別成分別の濃度再現性ならびに化学反応メカニズム中の不確実性が大気中のオゾン濃度に及ぼす影響を明らかにし、それぞれの改良の方向性を見出す。
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