研究課題/領域番号 |
19H04289
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
門野 博史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70204518)
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研究分担者 |
LIM YIHENG 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10789457)
山口 雅利 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20373376)
ラジャゴパラン ウママヘスワリ 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40270706)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レーザースペックル / バイオスペックル / 統計干渉法 / バイオスペックルOCT / 植物活性 / 植物の環境ストレス / 植物の極短時間成長挙動 |
研究実績の概要 |
本研究では、超高感度な光干渉法である統計干渉法(SIT)およびバイオスペックル光断層画像法(bOCT)に基づいて,植物の環境に対する極短時間の生理的・形態的応答を多元的に知ることにより,新しい植物の環境ストレスモニタリング技術を確立することを目指した。 SITを用いて得られる秒オーダーの成長挙動をサブナノメータの分解能で連続的に計測できるシステムを用いて,植物表面の2次元的形態応答に見られる新規な現象である植物成長の「自発的ナノメータゆらぎ」(NIF)の特性を利用する.加えて,新たに提案したbOCTを用いた植物内部の3次元的生理応答情報を統合して利用する。バイオスペックルと呼ばれる信号は生体内部の物質の輸送,細胞器官の運動,微細構造の変化を反映する動的な光散乱現象である.これらを総合して植物の環境応答を多元的に無侵襲,迅速かつ高感度に評価するシステムを構築した. SITシステムの光源および検出系の設計の見直しをおこなった。プローブ光の光強度が強すぎて対象植物に退色などの影響を与える事例が発生したため、計算機より光強度を低出力に保つよう変更し、それを補うために従来用いていたアナログCCDカメラをデジタルに変更し露光時間・フレームレートを計算機制御により最適化できるよう改良をおこなった。 修正した計測系の有効性を検証するための実験の一例として、アルミナナノ粒子が植物に与える影響の観測をおこなった。その結果、アルミナ粒子は植物内部の活性を数時間で高めている様子をモニタすることができた。その結果、発芽率やその後の成長にも促進効果があることが従来の観察法により検証された。 したがって提案手法は無侵襲かつ極早期に環境ストレスを評価することが可能であることが実証された。問題点としてSITによる種子に対する同時観察においては茎や葉のホルダーでは不十分であることがわかり今後改良することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
bOCT計測においては対象物の比較的深い領域からの信号は、特に植物の場合は光吸収率、散乱計数が大きいためSN比が悪化することにより見かけ上スペックルコントラスが上昇する。しかしながら、これは組織の活性を十分反映していないため、有意な信号のみを取り出すよう信号の評価およびそれに基づいて領域指定をおこなうようシステムを改良した。また、SITシステムに関して、プローブ光の光強度が強すぎて対象植物に退色などの影響を与える事例が発生したため、計算機より光強度を低出力に保つよう変更し、それを補うために従来用いていたアナログCCDカメラをデジタルに変更し露光時間・フレームレートを計算機制御により最適化できるよう改良をおこなった。さらに、SITの信号処理系においては、外乱による信号揺らぎを除去するよう改良をおこなった。これらのシステムの改良に時間を要したため、実際に植物を対象とした測定開始までに計画より遅れを生じた。 計測系の有効性を検証するための実験の一例として、アルミナナノ粒子が植物に与える影響の観測をおこなった。その結果、アルミナ粒子は植物内部の活性を数時間で高めている様子をモニタすることができた。その結果、発芽率やその後の成長にも促進効果があることが従来の観察法により検証された。加えて、このことは従来の生化学的方法によるアルミナ粒子の成長促進作用が報告されており、一致する結果が得られている。 一方マイクロプラスティックを用いた暴露実験では,濃度と共に種子に毒性を示し内部の活性を低下させる様子を数時間の早期に検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計測装置の基本設計・改良をおこない、基礎実験によりその有効性を示唆するデータが得られているので、次のステップとして環境汚染・ストレスの植物への影響を計測する実験をおこなう。具体的な環境問題として近年注目されているマクロプラスティックの土壌汚染による植物成長への影響、および酸性鉱山廃水(AMD)の植物への影響を本システムを用いて計測をおこなう。 マイクロプラスティックに関しては、ポリエチレンおよびポリスチレンを用いて実験をおこなう。また、土壌汚染物質として重金属が存在しておりマイクロプラスティックとの相乗効果を明らかにすることも目指す。 AMDに関しては実際のAMDの入手は困難でありまた、成分など条件をコントロールすることが困難であるため、模擬AMDを用いて研究をおこなう。具体的には重金属として鉄に注目し、硫酸鉄を用いて暴露実験をおこなう予定である。 我々のシステムでは内部の活性状態および植物表面の高精度計測による極短時間の成長計測をおこなうことができるが、植物の部位や成長段階においてこれらの計測法の特性・優位性を明らかにしてゆく。
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