研究実績の概要 |
起源試料としてニホンドロソコエビを給餌したマハゼの糞を回収し、分解実験を実施した。5尾のマハゼから10日間で合計5,677 mgの糞が回収され、1個体から1回に排泄される糞量は、45 mg~173 mgの範囲にあり平均116 mgであった。採取したマハゼの糞を一つの容器に入れ、均質になるように混ぜた後、50 mgずつ計40本の50mL遠沈管に分取した。32本には植種液(ニホンドロソコエビ飼育水由来の微生物)を、残りの8本にはろ過滅菌済み人工海水(微生物なしの対照系)を10 mLずつ入れ、ボルテックスした。また糞なしの対照系として、空の遠沈管2本に植種液10 mLのみを入れたものも準備した。遠沈管すべてに滅菌済みシリコ栓をつけ、バイオシェイカーで25 ℃, 60 rpm(水平振盪)で分解を行った。t = 0, 1, 2, 3, 6, 24, 48, 72 (hr)のタイミングで4本(+微生物なし対照系1本、糞なし対照系はt=0, 72のみ)ずつ試験終了し、分析に供した。既報に従い種特異的プライマーを用いて定量PCRを行った。分解実験の結果より、上位捕食者の糞に含まれるニホンドロソコエビ由来DNAは、安定であり明確な減少傾向が認められないことが分かった。糞の顕微鏡観察では消化後の外骨格が多いことが示されたが、DNAそのものは残存しており、環境中でのDNA分析において捕食後の残渣(糞)が環境DNA起源になりうることが実験的に示された。なお、今回は既に実績のあるCTAB法でのDNA抽出を行っているが、今後DNA抽出手法の精査を行い、この分解動態がDNA抽出手法による制約が原因でないことを確認する必要がある。
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