研究課題/領域番号 |
19H04292
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
作野 裕司 広島大学, 工学研究科, 准教授 (20332801)
|
研究分担者 |
谷口 直和 広島大学, 工学研究科, 助教 (30711733)
陸田 秀実 広島大学, 工学研究科, 准教授 (80273126)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リモートセンシング / 音響トモグラフィー / 数値モデル / 災害 |
研究実績の概要 |
本研究は,次の3項目について調査・研究を行うことを目的とする.すなわち、1) 複数の衛星データを組み合わせた豪雨直後における土砂流出状況の把握システムの構築,2) 濁質の粒径分布ごとの濁度把握システムの構築,3) 衛星・音響データを同化した高精度の3次元土砂流出分布把握システムの構築.である. まず、1)に関しては、衛星Landsat-8, Sentinel-2データなどを組みあせた,高頻度・高解像度の表層濁度分布推定アルゴリズムを構築するための研究を行った.具体的な成果としてはまず,西日本豪雨前後のLandsat-8データのバンド3(赤)とバンド(4)の大気補正済み反射率比を使って,濁度に相当する透明度を高い精度で推定することができた.これは実測の結果ともよく一致した.さらに,Sentinel-2やGCOm-C SGLIなどを使った濁度推定または検証も行い,いずれも良好な結果を得て,このような複数の衛星データを組み合わせれば,高頻度の濁度推定が可能であることが綺羅化になった.さらに,当初計画にはないが,新しい試みとして,生物光学モデルを使って,濁度(実際にはSS),Chlaの同時推定モデル(非線形の連立方程式の形をとるインバース法)を構築した. 次に2)の研究に関しては、音響トモグラフィー機器の送受信装置を高度化し実海域での送受信テスト実験を広島県竹原市で行い,経路平均流速の詳細な時間変化が計測できることを確認した.同実験の結果は現在ジャーナル論文の原稿を準備中である.同実験で,濁質の粒径分布推定を行うための試し実験として,研究で導入したパーティクルカウンター装置を使って粒径分布測定を行った. さらに3)の調査に関しては、衛星データと音響トモグラフィーデータを数値モデルに適用するための品質管理について予備検討を行い,高品質なモデルデータを作成する準備を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究計画に沿って、おおむね順調に進展している.具体的には、複数の衛星データを使った高頻度・高解像度の表層濁度推定は,Landsat-8,Sentinel-2,GCOM-Cなどの衛星データから高精度な濁度(透明度またはSSも使われる)推定が可能であることが検証され,その成果の一部は査読論文化された.今後は,これらのデータを同じ解像度で,かつ時系列的に隙間のないデータセットになるような時空間補間を行う手法の検討が必要である. また、音響トモグラフィーデータを利用した濁質の粒径分布推定において,音響トモグラフィー装置に関しては既存の装置に比べて安定して音波送受信に成功する装置を開発した.実海域での送受信テスト実験を広島県竹原市で行い,経路平均流速の詳細な時間変化が計測できることを確認した.本研究のためにパーティクルカウンターを購入し,パーティクルカウンターを使った水中物質の撮影による濁質の粒径分布測定を行った.現在,撮影画像から粒径分布を推定するための解析を進めている.数値モデルに関しても,衛星・音響データを同化するための準備が整った. 以上のことから、本研究は現在まで順調に実施されていると自己評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究も,おおむね当初の計画通りで推進していけばよいと考える.ただし、若干遅れている衛星データの時系列的な補間は、今後やや急いで進展させる必要がある.また,音響トモグラフィー装置の開発に関しては,若干の設計変更が必要であるがおおむね計画通りである.パーティクルカウンターによる粒径分布計測に関して,実験を再設計し粒径分布推定を高度化させる必要がある.また,実際に濁度計を使って濁度を計測し,パーティクルカウンターで得られる粒径分布と濁度の関係を明らかにする必要がある.その後音響強度との相関関係について進展させる必要がある.数値モデルに関しては,次年度,最終年度で実際の成果が出るので,さらに研究の進展を目指す.今後も3者の章テーマ研究をしっかり連結させることにより、研究の目標実現に近づけたい.
|