研究実績の概要 |
本研究では、アルミノ珪酸塩(アルカリ長石)がその骨格内への陽イオン交換反応から外部の他の陽イオン元素を捕捉する先行研究に基づき、焼却飛灰中の重金属類をアルミノ珪酸塩によって捕捉し、難溶性態化することを試みるものである。具体的な実施予定事項は、①アルカリ長石による飛灰中重金属類の捕捉・難溶性態化の確認、②捕捉された重金属の化学形態の特定と捕捉機構の解明、そして最終的には、③本手法により飛灰中の重金属溶出抑制(最終安定化物化)を実現する実プロセスを提案である。 2019年度は①を実施した。焼却飛灰に含まれる重金属のうち、Pb、Cd、Znを選択し、それぞれの塩化物、酸化物の試薬を用いた。これらの金属試薬に二種類のアルミノ珪酸塩(非晶質化インド長石とゾル試薬)をそれぞれ金属試薬の7倍量添加し、マッフル炉で700℃、3時間加熱した。加熱後には、水洗により易溶性画分を分離し、水洗後の残渣に対して王水分解、フッ酸分解を行うことで難溶性画分を抽出した。水溶性画分、難溶性画分の定量については、備品として購入したグラファイト原子吸光光度計を用いて行った。揮発画分については、添加量に対する易溶性画分、難溶性画分の収支から決定した。その結果、いずれの金属も酸化物(PbO, CdO, ZnO)では、加熱前、加熱後いずれも難溶性であり、例え飛灰中に存在していてもそれぞれの金属の溶出に与える影響は小さい。一方、それぞれの塩化物(PbCl2, CdCl2, ZnCl2)とアルミノ珪酸塩の混合加熱では、いずれも易溶性であるが、加熱後には難溶性態の増大が確認され、アルミノ珪酸塩での捕捉が認められた。特にゾルを用いた場合に、捕捉・難溶性化の割合が向上した。加熱温度は900℃での検討もおこなったが、900℃では揮発量が増大する傾向にあった。
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