研究課題/領域番号 |
19H04298
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東條 安匡 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70250470)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 焼却飛灰 / 重金属 / 難溶性態化 / アルミノ珪酸塩 |
研究実績の概要 |
本研究では、アルミノ珪酸塩(アルカリ長石)がその骨格内への陽イオン交換反応から外部の他の陽イオン元素を捕捉する先行研究に基づき、焼却飛灰中の重金属類をアルミノ珪酸塩によって捕捉し、難溶性態化することを試みるものである。具体的な実施予定事項は、①アルカリ長石による飛灰中重金属類の捕捉・難溶性態化の確認、②捕捉された重金属の化学形態の特定と捕捉機構の解明、そして最終的には、③本手法により飛灰中の重金属溶出抑制(最終安定化物化)を実現する実プロセスを提案である。 2020年度は、①について実際の飛灰を用いて検討した他、②についてはpH依存試験、SEMによる観察を行った。飛灰は都市ごみ焼却施設から採取した飛灰(未処理:Pb溶出量63mg/L)を用いた。飛灰とゾル試薬を600℃で3時間共加熱した結果、加熱後残渣からのPb溶出はほぼ0となった。ゾル試薬に対する飛灰の混合率を2倍、3倍と増加させてもPbの溶出が抑制されることを確認した。さらに温度と飛灰混合率を変化させて共加熱実験を行い、Pbの溶出濃度を測定した結果、飛灰に対してゾルの添加率を2%とした場合でPb溶出は放流基準を下回り、10%程度で環境基準を下回る濃度となった。②については、SEMで十分な確認ができる濃度とするために、PbCl2を用いて共加熱を行い、加熱残渣を薄片化して観察を行った。その結果、Pbは形成された粒子の内部に捕捉されていることが確認された。インド長石によるPbの捕捉について、pHが変化する場合の溶出挙動を確認した。PbCl2とインド長石の加熱後試料では、蒸留水での溶出試験ではpHが3程度と低かったが、難溶性のPbは約6割であった。NaOHを添加してpHを上昇させた結果、次第に難溶性Pbの割合が増加し、pH=5以降は100%が難溶性態となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で設定している3つの検討項目[①アルカリ長石による飛灰中重金属類の捕捉・難溶性態化の確認、②捕捉された重金属の化学形態の特定と捕捉機構の解明、③本手法による飛灰中の重金属溶出抑制(最終安定化物化)を実現する実プロセスを提案]のうち、それぞれを3年間の各年度で実施する計画となっている。これまでの検討で、アルミノ珪酸塩によって、Pb、Cd、Zn等の塩化物中の各元素を難溶性態化できることが判明し、さらに飛灰中のPbの溶出濃度を大幅に低減できることがわかった。②としてはSEMの観察で加熱後粒子の内部に捕捉されていることを確認したが、どのような機構で捕捉されているかの検討は不十分である。そのため、最終年度は特に、何故Pbがアルミノ珪酸塩中に捕捉されるのかに焦点を当てて検討する予定である
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今後の研究の推進方策 |
上記したとおり、飛灰中のPbは効果的に捕捉し難溶性態化できることは確認した。SEMによって加熱後残渣の内部にPbが捕捉されていることも確認したが、具体的に捕捉形態の解明には至っていない。そのため、水洗後の試料についてFT-IR、レーザーラマン分光、μXRD分析を行い、既存のデータベースとの照合から各重金属の化学形態、結合形態を明らかにする。また、溶出特性を多角的に把握するために溶出試験(pH依存試験、シリアルバッチ試験、逐次抽出試験)を行う。
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