本研究では、アルミノ珪酸塩(アルカリ長石)がその骨格内への陽イオン交換反応から外部の他の陽イオン元素を捕捉する先行研究に基づき、焼却飛灰中の重金属類をアルミノ珪酸塩との共加熱によって捕捉し、難溶性態化することを試みるものである。前年度の研究から、一般廃棄物焼却飛灰と非晶質化インド長石もしくはゾル試薬を共加熱することで、飛灰中のPbの溶出濃度が大幅に低下することを確認した。インド長石との共加熱試料については、蒸留水での溶出試験において試験後のpHが4程度と低かったが約6割のPbが難溶性態化しているという結果が得られた。一方、ゾル試薬との共加熱試料では、溶出試験後のpHが11程度と高く、本当に飛灰中のPbがゾルに捕捉されて難溶性態化しているのかが不明であったため、最終年度は、捕捉機構の検証を行った。ゾル試薬と塩化鉛試薬を混合し、500℃で2時間共加熱した。加熱後試料をpH依存試験に供した結果、pH=7以下でPbの溶出濃度が上昇する傾向が確認され、水酸化鉛として沈殿している可能性が示唆された。更に飛灰との共加熱した試料についてもpH依存試験を実施したが、同様にpH=5を下回ると埋立判定基準を超える溶出濃度となった。ゾル試薬と塩化鉛の混合比率を変化させた共加熱試験からは、ゾル試薬添加量が増加すると難溶性となるPbが増加することが確認できたが、本試験でもゾル添加量が多くなると溶出試験でのpHが上昇する傾向にあった。上記したとおり、アルミノ珪酸塩との共加熱による捕捉はイオン交換によるものであり、捕捉元素に対して等価分のKが易溶性になるが、Kの溶出量に変化は生じず、イオン交換が起こっていないこともわかった。加熱後試料のXRD分析からは、炭酸塩水酸化鉛のピークが確認され、難溶性態化はこうした塩の沈殿生成によるものであることを確認した。
|