研究課題/領域番号 |
19H04304
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
井上 一雅 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (20508105)
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研究分担者 |
福士 政広 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (70199199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 希土類元素 / ガドリニウム造影剤 / MRI / 環境負荷 |
研究実績の概要 |
東京都内全域において河川水に含まれるガドリニウム濃度の調査を行うことで、東京都におけるガドリニウム汚染の実態把握をすることを目的とした。河川の調査は、中川、荒川、隅田川、神田川、多摩川、仙川、野川、平瀬川、乞田川、大栗川および浅川の任意の66地点において採水を行った。採水地点は、下水処理施設の位置や、河川の合流を考慮して決定し、約5 km間隔で採水した。採水した水は、濾過および濃縮した後、ICP-MSを用いて希土類元素の測定を行った。本研究で調査を行った66地点のうち、44地点でバックグラウンド濃度の1.2倍を超えており、東京都の河川の大部分で明らかなガドリニウムの人為的介入を確認した。河川におけるガドリニウム濃度の平均値は、東京都全域で22.52 ppt (ng/L)を示し、23区内で31.62 ppt、23区外で9.37 pptを示した。高濃度なガドリニウムを計測したのは仙川および多摩川であり、それぞれ139.92 pptおよび122.11 pptであった。各河川におけるガドリニウムの濃度分布は局地的に上昇する傾向を示した。その多くの地点は下水処理施設の下流域であり、本研究で観測された河川水中のガドリニウムは、水再生センターを経由して環境中に放出されていると考えられた。加えて、採水時間帯の違いによりガドリニウム濃度が変動する可能性が考えられた。河川水中で計測されたガドリニウムの起点を水再生センターとした場合、下水処理施設の処理水量は常に一定の量ではなく、時間帯によって常に変動する。一般的に、下水量はヒトの活動が減る午後23時頃から減少し始め、午前11時頃で再びピークとなる。また、ガドリニウムの介入についても、ガドリニウムの起源として考えられているMRI検査用ガドリニウム造影剤の使用量も病院の診療時間に関係するため、常に一定量が流れ込んでくるとは考えられない。そのため、本結果は採水時間帯による変動をある程度考慮して評価する必要が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、東京都内の河川におけるガドリニウム汚染の実態把握を行うため、①地理的情報、天候、河川の水量、水再生センターの位置等を考慮した調査地点および調査時期の決定、②河川水に含まれるガドリニウム濃度の計測精度を担保するための試料前処理方法の検討を同時に実施した。2019年10月の台風19号を除いて比較的天候に恵まれ、①の検討が予定通りに進んだ。また、②については、国内外で入手可能な複数の河川標準水を用いて実施することで目的を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
河川調査で下水処理施設を経由して環境中に放出されていることが明らかとなった。次年度は、東京都内の水再生センターに流入する下水中に含まれるガドリニウム濃度を計測し、その起源の検討を深化させる。また、水再生センターにおける処理水を調査することで、ガドリニウムの動態および現代の下水処理技術で除去可能か否かを明確にする。加えて、各水再生センターの管轄区域内に設置されている医療機関数やMRI装置台数、人口、高齢化率などの統計データを整理し、水再生センターで計測されるガドリニウム濃度の相関性を明らかにする予定である。
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