研究課題/領域番号 |
19H04305
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
川上 浩良 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (10221897)
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研究分担者 |
佐藤 潔 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (40285101)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二酸化炭素削減 / ナノ粒子 / CO2分離膜 / CCS / CCU / ナノファイバー |
研究実績の概要 |
本年度は、(1) 基本骨格であるPBIナノファイバーに異形構造球状ナノ粒子をPIM-1と共に流し込んだ、ナノファイバーフレームワークからなるナノ粒子含有複合膜を作製した。(2) そのナノ粒子含有複合膜の気体透過性の評価と、長期間に及ぶ気体透過安定性評価を行った。 (1)の研究成果を説明する。基本骨格であるPBIナノファイバーに球状ナノ粒子とPIM-1を流し込んだ複合膜の作製に成功した。作製法は、先ずはナノ粒子をナノファイバーフレームワークに流し込む。ナノ粒子が膜全体に分散されているが注意して製膜する。その後にPIM-1溶液をナノファイバーフレームワーク内でキャストする。得られたナノ粒子含有複合膜の膜厚は、最初に用いるナノファイバーの膜厚に依存して膜厚を変えられるなど、新しい製膜法を確立した。その結果、数マイクロから数十マイクロの膜厚からなる複合膜の作製が可能となった。さらにナノ粒子濃度を50wt%まで増大できることにも成功した。膜内の構造はSEM等を用い詳細に解析し、粒子が膜内に均一に分散していることも明らかにした。複合膜の膜の機械的強度も向上し、ナノ粒子を高濃度で導入しても膜は安定的に形成されることを見出した。 (2)の研究成果を説明する。用いたPIM-1の気体透過安定性は著しく低く、それが実用化の大きな障害となっている。実際に1年後のPIM-1膜の気体透過性は70%以上低下し、透過性はさらに減少し続けることが明らかとなった。一方、複合膜の気体透過性の減少は1年後でも10%以内に抑えられ、気体は安定的に透過できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、(1)基本骨格であるPBIナノファイバーに異形構造球状ナノ粒子をPIM-1と共に流し込んだ、ナノファイバーからなるナノ粒子含有複合膜の作製と、(2) そのナノ粒子含有複合膜の気体透過性の評価と、長期間に及ぶ気体透過安定性評価を行った。 (1)では、製膜法を再度検討した結果、膜厚の制御が可能な製膜方法を確立し、さらに高濃度でナノ粒子を導入することが可能となった。これまで安定的な膜形成できるナノ粒子の導入濃度は30wt%程度であったが、50wt%まで安定的に粒子を導入でき、かつ膜は平滑性を保った。さらに膜の機械的強度は飛躍的に向上し、膜の総合的なパフォーマンスは著しく向上した。 (2)では、複合膜の気体透過性が著しく安定であることを初めて明らかにした。先ずは、気体透過性はナノ粒子濃度依存的に向上し、二酸化炭素透過係数は10,000Barrer程度の超高気体透過性を実現した。さらに、複合膜の気体透過性は1年後でも90%以上安定であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果より、異形構造球状ナノ粒子を用いれば複合膜の作製は可能であり、濃度依存的に気体透過性を向上できることを明らかにした。さらに、複合膜の気体透過性は極めて安定的に維持されることも見出した。今後の検討は、大きく以下の2つに大別される。 (1) 複合膜の気体透過性の更なる向上を目指す。表面修飾構造が異なる新規ナノ粒子を用いて複合膜を作製、その気体透過性を検討する。従来の気体透過性能を凌駕する新規複合膜を作製する。 (2)複合膜の気体透過性は極めて高い安定性を示したが、その理由は未だ明らかではない。その理由を明らかにし、今後の気体分離膜の開発指針に繋げたい。実用化の観点からは、気体透過性の安定性は必須の評価基準である。これを明らかにできれば、今後の気体分離膜開発への波及効果は極めて大きい。
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