研究課題/領域番号 |
19H04308
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋田 俊之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40180814)
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研究分担者 |
福原 幹夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 学術研究員 (30400401)
佐藤 一永 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50422077)
今野 一弥 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (80270198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蓄電体 / アモロファス / 凹凸構造 / 環境調和エネルギー / 陽極酸化 |
研究実績の概要 |
(1)ナノ寸法の凹凸表面による蓄電現象:種々の方法で陽極酸化した試料に対して、高精度AFMを用いて凸径d、凹径c、凸径/凹径比d/c及び凸頂点から凹底点までの深さhを計測し、各々の試料の蓄電特性を測定した。その結果、蓄電量はd、h、d/h比の減少に伴って増大し、d/c=1の時、最大となった。等径の凹凸で深さが浅い形状が蓄電性にとって最適であることがわかり,蓄電現象が量子ナノサイズ効果による並列コンデンサーの分布定数回路でモデル化できることを示している。 試料表面をフーリエ赤外線(FT-IR)解析とミクロレーザーラマンスペクトラム法で測定した。その結果、AlO6クラスターは3505 cm-1のFT-IRピークバンドと1047 cm-1のラマンピークによって特徴づけられることが分かった。Thomas-Fermiによる遮蔽理論に基づく数値的解析では凸径21 nmで約-20 eVの仕事関数値が得られた。Al基アモルファス合金についてのこの値は、アモルファスチタニアやアモルファスポリマーの仕事関数より大きく、電子吸着能が高いことを示している。 (2)リボン蓄電体の集電性能向上:表面ナノ凸点を集電板と連続的に接着させることが蓄電性向上にとって最も重要な1つの課題である。厚さが0.1, 1, 10 μmの金箔を用いて凸面周囲を覆い、ゴムチューブに挿入後脱気し1, 10, 50、100, 200 MPaの静水圧での接着を試みた。0.1μm膜は凹面まで接着し、10 μm膜は接着せず、 1μm膜は一部が接着したのみで安定な電極作成はできなかった。この結果を踏まえて、凸面への垂直Au/Cr蒸着を乾式法により行ったところ、Au/Cr金属により凹面奥底まで蒸着することができた。試料から5度傾斜させたほぼ平行蒸着も行ったものの、蓄電効率は極めて低い結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蓄電性発現のAlO6クラスターを持つ表面トポロジーについては、量子ナノサイズ効果の観点から究明しなければならない課題であった。AFMを用いた解析より、蓄電には分布定数回路という新しい合理的な構成が必要であることが示された。一方、AlO6クラスターの非破壊表面解析法は現在まで存在しなかった。今回、FT-IR解析とミクロレーザーラマンスペクトラム法で特定のピークを確定できたことは、アモルファスアルミナの蓄電性開発において、容易にかつ安価に測定ができるため、大きなブレークスルーであると考えられる。また、遮蔽理論に基づく仕事関数計算値はAlO6クラスターが極めて電子吸着の大きい物質であることを示しており、これまの研究で用いてきたアモルファスチタニアやアモルファスポリマーより有望であることがわかった。 広面積化や積層化は大きな蓄電容量を確保することにとって重要な課題である。現在の機械的締結法に代替する2つの方法を試みたものの良い結果が得られていない。金箔接着法は一番安易な方法であったが、金箔はナノ径点上に接着しない。接着には広い面積が必要なことが考えられる。固体/気体の電気二重層を必要とする本系のスーパーキャパシターは凹面上に空間が必要で、凹面まで金箔が被覆すると接着性は向上するものの,電気二重層が作成できない。 このように、本年度に作成した試料と金属電極の接着が不十分であったために、薄膜引張り試験やリボン蓄電体の強度特性評価の十分な実施は今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
リボン蓄電体を積層化させるための方式として、金箔接着や金蒸着を用いてナノ径凸点と接着させた電極作成に関する検討を行い、一部の条件では実現可能であったもののその電気的特性は限られているのが現状である。そこで次年度は、以下の方法も加えた検討を行うことを予定している。すなわち、AlO6クラスターから成る黒色アモルファスアルミナを還元性雰囲気下で作成し、それを30 nm以下のナノ粒子に粉砕し、さらに、絶縁性接着ポリマーと混合することによって、ナノ粒子が精度よく平面的に配列したシートを作成する。その後に、ナノ粒子間の上部接着ポリマーを液体除去し、ナノサイズの凹凸面を作成させることに挑戦する。電極としての金属板との接着は、従来とは異なり、金属板の上からこのシート圧着させる。シート厚さは約3μmであるので広面積化も積層化も容易となることが期待される。積層体にとってシート強度は重要な特性であることからシートの強度を計測する。さらに、積層体の充放電特性を直流法と交流インピーダンス法で多面的に評価する。 蓄電性の黒色のアモルファスアルミナを構成するものは従来の白色アモルファスアルミナを構成するAlO4やAlO5クラスタ-ではなくAlO6クラスタ-であることを見出すことができた。このAlO6クラスタ-が何故、強力な蓄電性を誘起するのか解明する必要がある。このため次年度では、第一原理分子軌道法シミュレーション解析が必須になるものと考えている。そのため、協力研究者の静岡大学 藤間信久教授と連買い研究を行う。AlO6クラスタ-の解明はまだ行われていない。AlO6クラスタ-は酸素原子ないしAl元素が欠損している可能性が考えられる。
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