| 研究実績の概要 |
溶媒抽出と鉱物処理に用いるマルチコレクターの開発を目指し、ベンゼン環に2個のオクチルチオエーテル構造をもつオルト-, メタ-, パラ型ビス（オクチルチオエーテル）ベンゼンと、オクチルチオエーテル構造の1個をアミノ基に変えた（オクチルチオエーテル）アニリン体を新規合成することで、溶媒抽出用「抽出剤」と浮選用「捕収剤」としての能力評価を行った。
抽出剤に関しては、パラジウム（Pd）と金に対する抽出能力を中心に調べた。パラ体である化合物1,4-ビス（オクチルチオ）ベンゼンに関しては、クロロホルムあるいはケロシンを希釈溶媒とすることで、塩酸溶液中のPdおよび金を効果的に抽出できることを確認した。具体的には、Pdあるいは金濃度が1mMの塩酸溶液を対象に、クロロホルムを希釈剤とした場合、同化合物（抽出剤）濃度が1mMでは金の抽出率が約58%であったのに対し、抽出剤濃度を5mMにするとほぼ100%の金を抽出した。一方、Pdに関しては、希釈剤にケロシンを用いることで抽出率が高く、抽出剤濃度が1mMの場合に抽出率68%、2～5mMであれば90%以上のPdを抽出することがわかった。
一方、浮選用「捕収剤」については、アニリン体の捕収効果が非常に高く、黄銅鉱鉱石や金鉱石に対する捕収特性を調べた結果、オルト型である化合物1,2-（オクチルチオエーテル）アニリン体は、鉱石あたりの添加量100 g/tで銅回収率が92%に達し、既存捕収剤であるアミルキサントゲン酸カリウム（PAX）の約60%を大きく上回った。金鉱石に対しても、PAXの金回収率が30%程度であったの対し、同化合物の回収率は50%程度となりPAXを上回るほか、金品位が元鉱の10倍前後に濃縮することを明らかにした。
以上、今回新規合成した化合物に関しては、抽出剤あるいは捕収剤の能力を有するマルチコレクターの可能性があることを確認した。
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