研究課題/領域番号 |
19H04312
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シクロデキストリン / チューブ型シクロデキストリン二量体 / リンカー / 吸着材 / 不飽和脂肪酸エステル / 包接 / ゲスト選択性 |
研究実績の概要 |
α-あるいはβ-シクロデキストリン(CD)二分子を複数の芳香族リンカーで連結させたチューブ型CD二量体を合成し、不飽和脂肪酸エステルに対する包接能について検討した。まずα-CD二分子を6つのp-キシリレンリンカーで連結したチューブ型α-CD二量体を合成し、不飽和脂肪酸エステルに対する包接能を、m-キシリレンリンカー連結α-CD二量体の包接能と比較した。m-キシリレンリンカー体はシス体のオレイン酸メチルよりもトランス体のエライジン酸メチルに対してより高い包接能を示したのに対し、p-リンカー体はそれとは逆に、トランス体よりもシス体に対して高い包接能を示した。p-リンカー体では、二量体を構成する上下のα-CD分子が水平方向にずれてm-リンカー体の場合とは異なる包接空間が形成されるため、シス体選択性が発現したと考えられる。一方、β-CD二分子を7つのp-キシリレンリンカーで連結したチューブ型β-CD二量体は、シス体よりもトランス体に対して高い包接能を示した。このようにリンカーの構造を変えることでチューブ型CD二量体の包接空間の形や大きさが変化し、不飽和脂肪酸エステルに対する包接選択性の制御が可能となることがわかった。また、β-CD二分子を7つのm-キシリレンリンカーで連結したチューブ型β-CD二量体の6位水酸基すべてをメチル化することで、アセトニトリル中の不飽和脂肪酸エステルに対して高い包接能が発現することが分かった。6位水酸基のメチル化によりチューブ型β-CD二量体の包接空間が拡張されるため、包接能が向上したと考えられる。このメチル化したチューブ型β-CD二量体は、不飽和脂肪酸エステルの中でも特にオレイン酸メチルに対して高い包接能を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α-あるいはβ-CD二分子を複数のp-キシリレンリンカーで連結したチューブ型CD二量体の合成に成功し、それらの不飽和脂肪酸エステルに対する包接能を、対応するm-キシリレンリンカー連結CD二量体の包接能と比較した。リンカーがm-キシリレンリンカーからp-キシリレンリンカーに置き換わると、α-CD二量体ではトランス体選択性からシス体選択性に包接能が変化し、β-CD二量体ではそれとは逆にシス体選択性からトランス体選択性に変化した。このように、α-あるいはβ-CDを集積させたチューブ型CD二量体のリンカーの構造を変えることでその包接空間の形や大きさが変化し、不飽和脂肪酸エステルに対する包接選択性の制御が可能となることがわかった。また、6位水酸基をメチル化することで、チューブ型β-CD二量体の包接空間が拡張し、不飽和脂肪酸エステルに対する包接能が向上することも明らかにした。このように、チューブ型CD二量体を構成するCD環のサイズのみならず、リンカーの構造やチューブ末端へ導入する置換基の種類を変化させることにより不飽和脂肪酸エステルに対する包接選択性が制御できることを明らかにした。以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
食用油中の有害脂肪酸成分を高効率除去できるチューブ型シクロデキストリンホスト分子の設計・合成と吸着能の評価を引き続き行う。 1.チューブ型シクロデキストリンホスト分子の設計と合成 応募者がこれまでに見出した、オイル中でゲスト包接能を示すシクロデキストリンホスト分子に関する知見ならびにマルチリンカーをもつシクロデキストリン二量体の合成法に基づき、シクロデキストリンならびにシクロデキストリン誘導体を出発物質に用いて、それらを種々の連結基で結合させたシクロデキストリン二量体(チューブ型シクロデキストリン二量体)を設計・合成する。ここで、これまでの知見に基づき、トランス脂肪酸エステル吸着に対しては、α-シクロデキストリンに加えてβ-シクロデキストリンとその誘導体を出発物質に用いてチューブ型シクロデキストリンホスト分子を設計・合成する。 2.有機溶媒中ならびに食用油中の有害脂肪酸エステルに対する吸着能の評価 上記1で合成したチューブ型シクロデキストリンホスト分子を用いて、有機溶媒中ならびに食用油中のトランス脂肪酸エステルに対する吸着能を評価する。
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