研究課題/領域番号 |
19H04323
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
竹内 やよい 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (50710886)
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研究分担者 |
Gasparatos Alex 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 准教授 (20726369)
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (30325138)
石濱 史子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (80414358)
鮫島 弘光 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, リサーチマネージャー (80594192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 花粉散布 / 遺伝的多様性 / サラワク州 / アルビノ / フタバガキ科 / Shorea / 種子 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で、予定していた渡航と現地調査がすべてキャンセルされたため、これまでのデータを利用して、種多様性や生態系サービスに関する解析を進めた。 特に熱帯林において重要な生態系サービスの一つである送粉について、東南アジア熱帯林の主要な構成種であるフタバガキ科Shorea属の1種を対象とし、送粉距離、種子や実生の他殖率・生存率についての研究を行った。遺伝解析や統計解析の結果、Shoreaの自然集団では他殖率が高いこと、長距離の花粉散布が頻繁に行われていることが分かった。また、種子親と花粉親が遺伝的に近縁である場合は、種子サイズが小さくなる傾向があった。このことは、二親性の近交弱勢を示している。またある年において、葉の葉緑素が欠如するアルビノの表現型を持つ個体が多数観察されたため、その種子親の実生集団の遺伝的組成を調べた。ほとんどのアルビノ実生(98.3%)は、自殖由来の個体であり、また観察の結果、全個体が死亡したため致死的な形質であることを確認した。さらに、観察された葉色表現型(緑:アルビノ)の分離比は、補足遺伝子モデルと一致しており、2つの遺伝子座にある2つの顕性遺伝子の組み合わせが Shoreaのアルビノ表現型を決定していると考えられた。アルビノではない緑葉の形質をもつ自殖由来の実生においても、背丈が短くなる傾向があり、死亡率も高かった。つまりShoreaには、自殖・二親性による近親交配によって生存に不利な形質が発現する強い近交弱勢の効果があることが明らかとなった。これらの結果は、土地利用改変や気候変動の影響で送粉パターンの変化すれば、近親交配を引き起こし、繁殖成功度の大きな減少につながる可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響で、予定していた渡航がキャンセルされたため、現地調査が遅れている。一方、現地のカウンターパートとは、定期ミーティングを実施し、連携体制を維持した。また、既存のデータを用いた研究について進めて、論文も出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
渡航再開を見込んで、現地調査を再開するとともに、主要な生態系サービスである林業をターゲットとした研究を効率的に進める。
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