研究課題/領域番号 |
19H04326
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
由里本 博也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00283648)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタノール誘導 / メタノール変換 / 天然ガス / バイオマス |
研究実績の概要 |
1.酵母メタノール誘導制御機構の分子基盤解明 前年度に引き続き、「強力なメタノール誘導性遺伝子発現」というメタノール酵母の重要形質を制御する、各種転写因子の作用機構、メタノール濃度に応答したシグナル伝達経路、mRNAの動態制御機構に関する研究を行った。これまでに取得した転写制御因子の遺伝子破壊株を用い、前年度までに確立した解析条件により、それぞれの制御因子が関与する制御段階を明らかにした。また、メタノール誘導性転写制御因子の遺伝子プロモーターの解析を行い、メタノールに応答する遺伝子発現に必要かつ十分な領域を2箇所同定した。さらに、メタノール濃度に応答したシグナル伝達への関与が示唆されている転写因子について、メタノール濃度に応じたリン酸化動態を明らかにするとともに、高濃度および低濃度メタノールへの応答に重要な機能領域をそれぞれ同定した。メタノール誘導性mRNAの細胞内可視化手法を新たに構築し、当該mRNAの細胞内動態を解析することに成功した。 2.天然ガスおよびバイオマスからのメタノール変換技術の開発 前年度に引き続き、天然ガスやバイオマスを高効率にメタノールに変換する生体触媒(酵素)と、これを発現する微生物細胞の構築を目指し、メタノール生成酵素の高活性変異型酵素の開発や宿主細胞の構築を行った。また、メタノールからの機能性生体高分子の生産例として、メタノール細菌の細胞壁多糖成分がイネに対する増収効果をもつことを論文発表した。これは、メタノールを炭素源として高密度培養が可能なメタノール細菌をメタノールバイオエコノミーで活用する具体例となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母メタノール誘導制御機構の分子基盤解明については、概ね計画通りに進展しており、メタノール誘導性プロモーター内のメタノール応答配列やメタノール濃度に応答する転写因子の機能領域の同定に成功した他、メタノール誘導性mRNAの新たな解析手法の開発に成功した。天然ガスおよびバイオマスからのメタノール変換技術の開発についても、当初の計画通りに進行しており、メタノールからの機能性生体高分子の生産例を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
酵母メタノール誘導制御機構の分子基盤解明については、メタノール応答配列への各種転写因子の結合を解析するとともに、メタノール濃度に応答する転写制御因子と上流のシグナル伝達因子との関連を調べる。天然ガスおよびバイオマスからのメタノール変換技術の開発については、高活性変異型酵素遺伝子ライブラリーをメタノール酵母などの宿主に導入して活性評価と高活性酵素のスクリーニングを進めるとともに、異種タンパク質高生産のための宿主開発を進める。
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