研究課題
本課題では、世界規模での水不足問題を解決するため、太陽光エネルギーを用い海水を気化・凝縮させる淡水化技術を研究した。近赤外線を含めた地表に届く全太陽光を吸収できる光熱変換材料の使用を目指し、特殊な色素修飾セルロースろ紙や多孔性ポリウレタンシートと海水の接触性を高め、また淡水化処理の作動時間を長くするため、疎水性膜、海水を毛細管現象で吸い上げる親水性膜、光熱変換シートを重ねた三枚膜法を考案し、疎水性膜上に毛細管力を用いて海水を自動供給させ、上方より太陽光を照射することで疎水性膜下に脱塩された淡水を得ることができた。淡水の回収量は、膜下での水蒸気の凝縮を促進することで増加させることにも成功した。膜や微細構造を用いた光熱変換による水蒸発において、光照射部極近傍の水温を非接触で評価することは太陽熱蒸留用材料の開発等において極めて重要である。そこで、水の屈折率変化から水温を見積もる光学系を構築し、モデルケースとして光照射時の窒化チタン薄膜上の水温測定を行い、光強度に比例した水温測定に成功した。一方、太陽光による熱で海水を気化させる淡水化装置では、水の高い気化熱のため、水の気化を伴わない方法[例えば、逆浸透膜法(RO)法]と比べ、淡水造水量には限界がある。そこで三枚膜法を多段にする改良を施し、水蒸気から淡水になる際に放出する凝縮熱を再利用できるシステムを構築した。五段以上の装置を用いることで、海水からの淡水製造における照射太陽光利用のエネルギー効率を著しく向上させることに成功した。また、疎水性膜細孔中における水溶液の挙動の解析は、NMR法による分析では膜中の水のピークにブロード化が起こることを見いだし、また赤外線スペクトルによる解析では膜蒸留の手法を用いて水を透過させた後のPTFE膜にHF由来と思われるスペクトル上の変化を観測することもできた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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