研究課題/領域番号 |
19H04333
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
明日香 壽川 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90291955)
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研究分担者 |
大塚 健司 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター環境・資源研究グループ, 研究グループ長 (20450489)
TRENCHER GREGORY 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90802108)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / エネルギー転換 / 再生可能エネルギー / 省エネ / 政策決定システム / 公正な転換 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツなどに端を発した “エネルギー転換”、すなわち原子力発電と石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の依存度低減および太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)の主力電力化に関して、欧米諸国および日本・韓国・中国・台湾での状況を明らかにするものである。この東アジア4カ国のエネルギー政策は、地球温暖化や大気汚染という環境面だけでなく、再エネによる産業振興いう経済面でも世界的にも注目される。一方、エネルギー転換に伴って発生する経済的、社会的、そして政治的な問題として、1)再エネ補助金(賦課金)の増大、2)送電線への未接続、3)立地合意形成(メガソーラー問題など)、4)政策決定プロセスおよび発電事業への市民参加、5)雇用喪失対応および再エネ技術覇権競争(中国企業の市場席巻)、などの共通課題を持つ。これらの課題に対する各国の取り組みや制度設計が相互に影響するのも、この東アジア地域の特徴である。2022年度は、欧州および米国での現地調査を実施し、各国・地域でのエネルギー政策の現状と課題について具体的な情報を得ることができた。また、各国において、エネルギー転換に対する抵抗勢力とも言える化石燃料会社のカーボン・ニュートラル政策の内実などに関しても明らかにした。さらに、政策決定プロセスに関する研究として、ウェールズの未来世代法に関する情報収集をウェールズなどにおいて実施した。ウェールズでの調査の結果は、日本での同様の制度の導入に関して大きな示唆を与えるものであり、現地の担当者とは今も連絡を取り合っている。また、日本での導入に関して、具体的な議員立法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共通課題である再エネ補助金、送電線への接続、立地合意形成、政策決定プロセスおよび発電事業への市民参加、雇用喪失対応および再エネ技術覇権競争に関して、それぞれ日本での状況に関してはある程度の調査研究が実施できた。特に、雇用喪失対応に関しては、日本での60年前の炭鉱整理の際の施策や米国のバイデン政権での雇用転換政策に関して多くの情報を集めた。また、再エネ賦課金に関しては、その時系列的な変化に関して、定量的なデータを得ることができた。ただし、中国などの状況に関しては、現地調査などが困難であるともあり、情報収集や調査研究は十分にはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
共通課題の中で、特に再エネ補助金、政策決定プロセスおよび発電事業への市民参加、雇用喪失対応および再エネ技術覇権競争に関して、日本および諸外国の状況を明らかにする。再エネ補助金に関しては、各国のFIT制度および原発などの他の発電エネルギー技術に対する補助金などを比較する。政策決定プロセスに関しては、ウェールズの未来世代法や気候市民会議などの直接民主主義と関わるような政策決定プロセスの導入に関して、欧米やアジアでの動きを参考にしながら、日本での制度設計について具体的に考える。再エネ技術覇権に関しては、太陽光パネルおよび電気自動車にフォーカスして、各国の政府や企業の戦略について明らかにし、それが各国の交通分野にCO2排出量などに対して与える影響も明らかにする。なお、2023年度は最終年度になるため、これまでに成果を整理すると同時に、コロナ禍で実現できなかった現地調査を行う。
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