研究課題/領域番号 |
19H04336
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
婁 小波 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50247970)
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研究分担者 |
川邉 みどり 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80312817)
岩田 繁英 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80617316)
中原 尚知 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90399098)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会環境影響評価 / 海洋開発 / 洋上風力発電 / 海洋深層水開発 / 漁業補償 / 合意形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、持続可能な海洋開発のための「社会環境影響評価」手法の開発を目標として、特に漁業とその拠点地域に着目して評価手法を開発することである。国際的スタンダードとなりうる海洋開発の社会影響評価手法の体系化を図るとともに、事例対象地域となる現場の研究協力者との協働によって地域共同体との交流を通して実効性のある実践的な手法の開発を目指している。具体的には、①既存産業(漁業、観光業など)の社会経済活動への影響評価手法の開発、②海洋環境生態系影響の社会経済的評価手法の開発、③海洋開発における効果的な合意形成手法の提示、という三つの課題を設定している。 2019年度においては、沖縄県久米島での海洋深層水をめぐる開発事業、および福島県での洋上風力発電実証事業を対象事例として取り上げて、深層水取水のための漁業権放棄過程、計画中の温度差発電実証実験に伴う取水量の配分方法、洋上風力発電施設設置による漁業操業への影響などについて分析を実施し、それらが地域漁業・観光業等の社会経済影響費用とその負担、便益とその配分、損失への補償、関連産業への影響、さらには地域振興への寄与などについて分析を行った。とくに社会影響評価における「変化のプロセス」に着目し、漁業者共同体の合意形成の過程および要件、環境影響評価と社会影響評価との統合をテーマに、以下のことを行った。①海洋深層水開発事業ををめぐる受容の過程を分析することで,漁業と新たな海洋利用開発との共存の要件について検討した。②洋上風力発電実証事業実施前に行われた環境影響評価について社会影響評価の観点から検討し、その課題を抽出した。③漁業をめぐる資源環境的・政治経済的環境の変化に対する漁業共同体の適応について予備調査を実施した。それらの分析によって、社会環境影響評価手法、環境生態系影響の社会経済的評価手法、ならびに合意形成手法に関する予備的考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画では、長崎県五島市における洋上風力発電事業を対象としたフィールドワークを実施する計画であったが、天候不順やコロナ禍のために当初計画通りに調査を実施することはできなかった。代わって、2020年度において調査実施予定であった、福島県沖で行われていた洋上風力発電実証事業をフィールド調査することができ、さらには洋上風力発電事業を計画しているいくつかの自治体に対しても予備調査を実施することができたので、調査計画はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である、持続可能な海洋開発のための「社会環境影響評価」手法の開発を目指して、①開発事業の既存産業の社会経済活動への影響評価手法の開発、②海洋環境生態系影響の社会経済的評価手法の開発、③海洋開発における効果的な合意形成手法の提示、という三つの課題解明に取り組む。 2019年度に調査を行った沖縄県久米島の海洋深層水開発事業、福島県沖の浮体式洋上風力発電実証事業に加えて、長崎県五島市と秋田県の洋上風力発電事業、ならびに排他的経済水域や公海での海底資源開発のケースを取り上げて分析を進める予定である。 2020年度では、以下のことを中心に研究を進める。①引き続き漁業補償手法などの社会環境影響評価を実施する際に最低限必要な精度を担保するために必要なデータに関する検討を実施し、その成果を論文等としてまとめていくとともに、新しい推定手法(機械学習)を用いることで少ないデータで精度を上げることができるか、また、機械学習等で重要とされる情報と既存の方法で重要として判断される情報について検討していくことで推定精度の向上を目指す。②海洋環境生態系への影響の社会経済的評価手法の開発に向けて、一般市民による生物多様性に対する理解度や意識、価値観が深海と沿岸域においてどのような異同を持つのかに関する検討を行い、これまで発展してきた環境経済評価手法を深海の生物多様性の経済評価に適用していくための手法を開発する。③社会影響評価における「変化のプロセス」に着目し、漁業者共同体内、および漁業者共同体と非漁業セクター間との合意形成の要件、その具体的な手順を含めた方法、また、環境影響評価と社会影響評価との統合をテーマとして研究を行う。
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