研究課題/領域番号 |
19H04346
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
玄 武岩 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (80376607)
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研究分担者 |
パイチャゼ スヴェトラナ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (10552664)
藤野 陽平 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (50513264)
ブル ジョナサンエドワード 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 講師 (60735736)
南 誠 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (70614121)
冨成 絢子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80642644)
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (80646406)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 引き揚げ / 帰国 / 故郷の発見 / 新しい生活空間 / 生活と政策 |
研究実績の概要 |
従来の研究では、中国、台湾、 朝鮮半島、サハリンなど外地から内地への戦後日本人の帰還を、終戦直後の「引揚」と 1980年以降 の「帰国」という2つの群に分けて捉えてきた。しかし、そのはざまの1950~70年代には従来の枠組みでは捉えきれない独特な帰還体験が多数存在することに注目し、本研究はこの時期に軸足を置きつつ、帝国日本の崩壊後の移動を多面的に再考することでその全体像の把握を試みる。 本研究のこれまでの研究を通して、「引き揚げ」と「帰国」およびその国策の転換過程を検討した結果、戦後日本において帰国者政策が誕生する際の政治的メカニズムの一端が見えてきた。しかし、国民国家へと変貌する日本を目指して越境する人々を包摂/排除する社会的・文化的メカニズムを捉えるには、戦前と戦後の連続性にも注目する必要があり、引揚者と残留者の生活面へのアプローチを通して地域史と全体史の連結を試みことにした。 こうして2年目においては、書評会・研究会をとおして「引き揚げ」と「帰国」の概念的区分を理論的に定立し、「引き揚げと帰国のはざま」というテーマ設定を引き揚げ研究のなかに位置付け、本共同研究の独自性を精緻化することに努めた。そして研究成果を共有するために、コロナ禍のなかでオンラインの形となったが、ワークショップを2回開催した。2020年11月28日には「引揚者と残留者:生活と言説に注目して」を、2021年3月15日には「帝国崩壊後の新しい空間を生きた人々-その生活と政策に注目して」をそれぞれ開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、コロナ禍のなかでオンラインの形となったが、書評会をとおして「引き揚げ」と「帰国」の概念的区分を明確にしつつ、「引き揚げと帰国のはざま」というテーマ設定を引き揚げ研究のなかに位置付け直すことで、本共同研究の独自性を精緻化することを目指してきた。こうした取り組みを通して、本研究の成果を英文で出版することの意義についても確認し、国際ワークショップ「引揚者と残留者:生活と言説に注目して」を開催した。ワークショップでの議論を踏まえて、Finding “Home“: Migration of Residents of the Former Japanese Empire in the 1950s-1970s というタイトルを設定し、英文論文集の出版に向けて準備を進めてきた。 一方、年度末に予定していたシンポジウムは延期となり、その代替案として国際ワークショップ「帝国崩壊後の新しい空間を生きた人々:その生活と政策に注目して」を開催した。これらのワークショップを通じて、各分担者の研究が順調に進んでいることを確認し、その全体を束ねる枠組みについても議論を重ねた。その結果、「引き揚げ」と「帰国」の概念的区分において、国の政策の変遷過程も重要であるが、引揚者と残留者の生活も重要であることが見えてきた。こうした問題意識を、今後の研究に反映していく。
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今後の研究の推進方策 |
2年目においては、書評会・研究会をとおして「引き揚げ」と「帰国」の概念的区分を理論的に定立し、「引き揚げと帰国のはざま」というテーマ設定を引き揚げ研究のなかに位置付け、本共同研究の独自性を精緻化することに努めた。共同研究の最終年度となる2021年度は、こうした「国の政策」と「人の生活」の二つのアプローチを架橋する視座をもって共同研究の基調を再検討し、2021年11月に長崎大学での国際シンポジウムの開催に漕ぎ着ける。 長崎は、多くの引揚者にとって引揚げ第一歩の地であるにもかかわらず、その歴史についてはあまり注目されていない。戦後75年を過ぎた今だからこそ、引き揚げにとって重要な意義を持つ長崎で、「引き揚げ」と「帰国」の歴史を明らかにしつつ、今日のアジアと日本におけるこれらの本国帰還者の意義に関する再考を試みることは意義があるとみて、研究分担者が務める長崎大学でシンポジウムを開催することにした。 同シンポジウムに向けて、本研究の分担者および協力者は、Finding “Home”: Migration of Residents of the Former Japanese Empire in the 1950s-1970sに掲載する論文を練り上げていく。
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