2021年度には、プリンストン大学現代中国センターの研究グループとの共同研究の成果を、同大学の社会学教授である謝宇との共編として『世界の対中認識:各国の世論調査から読み解く』(2021、東京大学出版会)を出版した。同書では、日本、台湾・香港、フィリピン、アメリカといった、特に中国との関係が悪化している地域をケースにしながらも、ピューリサーチセンターのデータを用いて、世界各地の対中認識の特徴を比較によって明らかにした。同書は読売新聞の書評や日本財団、集英社のウェブサイトで詳細な紹介がされるなど、大きな反響を得ている。 また、アジア学生調査のデータを用いた英文論文を複数発表し、この2年の間に積み重ねてきた成果が形になってきている。 韓国やフィリピン、台湾の若手を中心にした研究チームとは2022年3月5日にオンラインでワークショップを実施。その際に提出された論文を、ASS Working Paper Seriesとして8本をアジア学生調査のホームページに掲載し(https://www.asianstudentsurvey.com/working-papers)、広くコメントを得られる準備を行った。これらの論文を編集し、今後、World Scientic社から英文の本を刊行する計画を立てている。 2020年のコロナ禍が拡がった時点で行った質問票調査の継続(パネル)調査も実施し、海外渡航ができなくなった状況にあって、日本人の対外認識(とりわけ対中認識)がどのような変化を見せるようになったかを分析できる基盤を作った。その成果をまとめた論文は、『21世紀の日中関係』(高原・園田・丸川・川島編、東京大学出版会)に、収録される予定となっている。
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