研究課題/領域番号 |
19H04348
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金沢 謙太郎 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (70340924)
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研究分担者 |
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (30325138)
加藤 裕美 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (10646904)
佐久間 香子 東北学院大学, 経済学部, 講師 (50759321)
分藤 大翼 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70397579)
泉山 茂之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (60432176)
浅野 郁 信州大学, 全学教育機構, 助教(特定雇用) (60840577)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ボルネオ / 原生林保護 / 先住民コミュニティ / 自律的生存 / 持続的管理 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により現地調査ができなかったため、既存データに基づいて、先住民コミュニティの交流に関する生活戦略の分析を行った。ボルネオ島のバラム河流域では、1970年代まで採集民であるプナン人と農耕民との間で「タム(Tamu)」と呼ばれる物々交換の市がもたれていた。それは、プナン人と顔見知りのごく限定された近隣の農耕民集団との間で行われていた。プナン人はタムの場に持参したものは、編組製品の原料である籐やお香のもとになる沈香や龍脳のほか、ロウソクや潤滑油の代わりとなるイリペナッツ、接着剤となるダマールやグッタペルカといった樹脂類などであった。薬のもとになる動物の胃石や蜜蝋、吹矢などを持っていくこともあった。これに対して、プナン人は森からは得られない鍋やヤカン、衣類、塩、タバコ、ビーズなどの生活物資や嗜好品を農耕民から入手した。タムに食料品が持ち込まれることはなかった。プナン人の年輩者は今もタムの慣習を憶えている。数日間行なわれるタムでは、政府役人とプナン人、農耕民との間でコミュニケーションがはかられた。タムはプナン人が自分たちの問題を政府に伝える唯一の機会であった。行政側も奥地の住民情報を得ることができる。プナン人は監督者の同席を歓迎していたという。毎回タムが終わると、参加集団は参加したすべての人びとを歓待するために踊りを披露した。タムは、自然と社会に定着した交換の場であると同時に、会合の場であり、文化祝祭の場であった。タムが行なわれなくなった現在でも、林産物、とりわけ籐や沈香はプナン人にとって貴重な収入源である。上記の研究概要の一部は、マレーシア・サラワク大学ボルネオ研究所が発行している学術雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、現地フィールド調査、調査結果の分析が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
地域情報の収集や現地カウンターパートと打ち合わせを継続しながら、渡航の可能性を見極めていく。
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