研究課題/領域番号 |
19H04367
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
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研究分担者 |
板倉 和裕 奈良工業高等専門学校, 一般教科, 特命助教 (00809212)
石坂 晋哉 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20525068)
小西 公大 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30609996)
鈴木 真弥 東京外国語大学, その他部局等, 研究員 (30725180)
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90468835)
舟橋 健太 龍谷大学, 社会学部, 講師 (90510488)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 司法積極主義 / 社会運動 / 自由主義 / 民主主義 / 現代インド / 公益訴訟 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、現代インドの民主主義体制の持続可能性を支えている要因が、①自由主義的な司法機関の積極主義と、②参加民主主義的な社会運動を通じて、マイノリティの自由を保障する法律と権利が形成されてきた司法政治過程にあることを、フィールド調査と判例・判決の分析によって明らかにすることである。 本研究の意義は、司法積極主義と社会運動という2つの観点から、現代インドの民主主義の動態を分析することを通じて、(a) 従来のインド研究が看過してきた司法府と社会運動の政治的役割に着目してインド民主主義論を深化させる、(b) 司法積極主義と社会運動を組み込んだ、他国の事例に応用可能な汎用性の高い「インド型自由民主主義モデル」を導出する、(c) 個別的文脈を重視する地域研究の視点から政治学や法学における普遍主義的な民主主義論や権利論に対して理論的貢献を果たす、という3点にある。 2019年度は、こうした研究枠組みならびに基盤的な分析概念を共同研究メンバー間で改めて共有するために研究合宿を実施するとともに、研究の着想ならびに各メンバーの事例分析について海外の研究者と意見を交換するために国際学会(The 11th International Convention of Asia Scholars [ICAS11] ;第11回アジア研究者国際大会)において2つのパネルを組織して研究報告を行った。さらにメンバー各自の臨地調査では、デリーにおける公益訴訟活動の参与観察や、アッサム州における市民権法改正反対運動およびNRC実施に関する調査、ネパール在住チベット難民によるインド国籍取得活動の実態調査、ハイデラバードならびにデリーのムスリム・コミュニティの宗教関連施設の調査などを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年7月にライデン大学で開催された The 11th International Convention of Asia Scholars(ICAS11;第11回アジア研究者国際大会)に応募していた2つのパネル(Social Inclusion/Exclusion in South Asia 1: Citizenship; 2: Minorities)が採択され、研究メンバーが報告を行ったうえで海外の研究者からフィードバックを得ることができた。 本研究課題のメンバーは、いずれも現代インドを分析対象としている一方で、研究分野は政治学や社会学、人類学、歴史学など多岐にわたるため、分析の枠組みや概念を共有することが課題の一つとなる。だが研究合宿を通じて、司法積極主義などの基礎概念について意見交換を行って各事例への適応可能性を検討し、2020年度以降の研究の進め方を確定することができた。さらに、研究成果を英語論文集として公刊することを目指すことで意見の一致をみた。 各メンバーの担当する事例分析については、デリーにおける公益訴訟活動の参与観察や、アッサム州における市民権法改正反対運動およびNRC実施に関する調査、ネパール在住チベット難民によるインド国籍取得活動の実態調査、ハイデラバードならびにデリーのムスリム・コミュニティの宗教関連施設の調査などを実施して研究を進捗させた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ・ウィルスによる感染症の世界的流行によりインド入国が極めて困難な状況がいつまで継続するか見通せないため、申請段階での研究計画を修正し、2020年度前半は文献調査を中心に研究を進めつつ、可能な範囲内でオンラインによるインタビュー調査を試みる。文献研究は、現代インドにおける司法積極主義ならびに社会運動をめぐる最新動向と、民主主義と自由主義に関する理論研究を中心に実施する。さらに、2019年度の臨地調査で得られたミクロなデータと文献調査に基づくマクロな制度分析との接合作業を各事例について進め、プロジェクト全体の仮説検証と理論構築を準備する。 2020年度後半は、日本国内およびインドにおける新型肺炎の感染拡大状況に細心の注意を払いつつ、各メンバーが臨地調査を実施して事例分析に必要なミクロ・データや資料の収集を継続する。その際、新型コロナ・ウィルス問題が社会運動に与えた影響や、政府の感染症対策をめぐる司法判断も視野に入れて調査を進める。それに加えて、各事例の検討ならびに全体的な仮説検証と理論構築のため研究会を実施する予定である。 2019年度に研究報告を応募した国際学会が中止となったため、改めて2020年度も研究発表の申請手続きを進め、研究成果の中間とりまとめを行って国際的なフィードバックを得る機会を確保することを目指す。それと並行して、研究成果を国際的に発信するため英文論文集を海外学術出版社から刊行するための準備作業も進める。 なお感染症の流行により計画通りの研究遂行が困難となった場合には、2021年度への研究経費の繰り越しならびに2021年度以降の集中的な現地調査へと研究計画を変更することも視野に入れて、メンバー間で緊密に連絡をとって進捗状況を確認していく。
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