研究課題/領域番号 |
19H04377
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山村 高淑 北海道大学, 観光学高等研究センター, 教授 (60351376)
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研究分担者 |
P・A SEATON 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (70400025)
須川 亜紀子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (90408980)
藤木 庸介 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (70314557)
張 慶在 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50782140)
vanderDoes Luli 広島大学, 平和センター, 准教授 (00839087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンテンツツーリズム / 戦争 / contents tourism / 戦争関連コンテンツツーリズム / ヘリテージツーリズム / 戦争遺跡 / コンテンツ / 多声性 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウイルスの世界的流行により現地調査をほとんど実施することができず、文献調査を通した基礎理論の確立に専念した。また、当初2020年度に企画していた現地調査が実施できなかったことから、2020年度予算の半分近くを翌2021年度に繰越し、2021年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大防止に十分配慮しつつ国内調査を進め、北海道、福井県、兵庫県、徳島県、広島県、宮崎県等の現地調査を実施した。そのうえで、こうした現地調査ならびに文献調査の結果を、英文学術書War as Entertainment and Contents Tourism in Japanとして総合的にとりまとめRoutledge社より出版した。なお出版形式は、オープンアクセスの電子書籍ならびにハードカバー書籍のふたつの形をとっている。同書では、第1章で戦争関連コンテンツツーリズム(war-related contents tourism)を分析する際の理論的枠組みを提示するとともに、続く2章から23章で、日本の歴史上の戦争を題材としたコンテンツがどのようなツーリズムを生みだし、ツーリズムの現場においてどのようなコンフリクトが発生しているのかについて、各地の具体的事例とともに分析を行った。そのうえで、最終章において、戦争関連コンテンツツーリズムの分類を行い、ヘリテージツーリズム等のツーリズム様式との関連性について論じるとともに、戦争関連コンテンツツーリズムの抱える重要な課題のひとつが、コンテンツそのもの、ならびにツーリズムの現場における〈多声性(multi-vocality)の担保〉であることを示した。 なお、今後書籍以外の形でも研究成果を公開し、大学・大学院での教材として活用できるよう、研究成果公開ウェブサイトの立ち上げも行った。次年度において、掲載コンテンツを作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査については、予定通りに進捗しており、研究実績でも触れたとおり、戦争関連コンテンツツーリズムの先行研究レビューや理論的枠組み・分析枠組みを書籍の章としてまとめることができた。また、本研究が計画段階で最重視していた現地調査については、2020年度は当初予定していた現地調査が新型コロナウイルスの流行拡大に伴い実施できなかったため、同年度予算の一部を2021年度へ繰り越している。そのうえで、2021年度は同ウイルスの流行が落ち着いた時期に、感染拡大に十分配慮すると同時に、分担者が居住する地域での調査に注力する等の工夫を行うことで国内調査を実施した。その結果、研究実績にて触れたとおり、その結果を国内事例に関する書籍として刊行することができ、大きく研究を進めることができた。その一方で、当初計画にあった海外事例の実地調査については、同ウイルスの流行に伴う出入国制限により実施することができず、進捗が大きく遅れている。そのため、当初海外調査のために計上していた2021年度予算を2022年度へ繰り越し、本研究の実施期間を1年間延長することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり、2021年度までの研究成果を書籍として取りまとめることで、日本国内における戦争関連コンテンツツーリズムの全体像と分析枠組みを一定程度提示することができた。今後はこうした枠組みが国際的に適用可能かどうか、検討を進めると同時に、教材作成を行う予定である。具体的には、これまでの進捗状況、新型コロナウイルスの流行状況、出入国制限の状況を踏まえつつ、2022年度は以下3つの方向性で補助期間の最終年度として研究を取りまとめていく予定である。 第一に、状況を慎重に判断しつつ、可能であれば、当初予定していながら実施できていない海外調査を実施する。万一、海外調査が困難な場合は、文献調査により海外事例の分析を行うとともに、国内事例調査を継続し、2021年度に提示した理論的枠組みの深化を行う。 第二に、2022年秋に国際学会において、これまでの研究成果の口頭発表を行う予定である。 第三に、2021年度の研究成果出版を踏まえ、同書で取りまとめた内容を大学学部・大学院での教材として幅広く活用していくことを目指し、オンラインで閲覧できる資料アーカイブや、動画教材の作成を進め、研究成果公開ウェブサイトにおいて公開する予定である。
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