研究課題/領域番号 |
19H04383
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
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研究分担者 |
川田 佳子 (押田佳子) 日本大学, 理工学部, 准教授 (10465271)
橋本 俊哉 立教大学, 観光学部, 教授 (50277737)
黒沢 高秀 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (80292449)
真板 昭夫 嵯峨美術大学, 芸術学部, 名誉教授 (80340537)
室崎 益輝 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (90026261)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害 / 復興 / 復興ツーリズム / コミュニティ / 継承 / 観光計画 / スタディツアー / 東北 |
研究実績の概要 |
環磐梯山エリア研究では、現地の調査パートナーと協議を重ね、とくに磐梯山周辺地域の住民に理解してもらうことをねらいとしたモニターツアーを企画・催行した。モニターツアー参加者の「評価」をもとに、参加者の自然災害に対する防災意識への影響を分析し、ツアーに協力した地域住民への影響を検討した結果、参加者の防災意識の向上、地域住民の意識変化の両面において、一定の効果があることが明らかになった。「防災教育と伝承の仕組み」づくりに観光の視点を導入することの有効性について検討し、観光が訪問者と住民とを結びつけ、両者の防災や教訓に対する学びを自然な形で推進するための仕組みづくりにおいて有効な手だてとなりうることを考察した。また磐梯山噴火後の裏磐梯の観光開発史について、文献の掘り起こしと解析を進めた。 岩手県宮古市研究では、語り部による「学ぶ防災」への参加、黒森神社へのウォークを実施したほか、三陸ジオパーク協議会によるイベントに参加した。復興の過程で立ち現れてくるこれらのプログラムの展開を把握した。 江戸時代から東北一円に伝えられる「災害備荒録」が、今日の食にどれだけ反映されているかを明らかにする研究に着手した。今年度は文献収集と解析を行った。 関東大震災以降の復興計画における観光への配慮は、三宅島噴火災害が発生するまでの70余年間、温泉地のハード面での整備に留まっていた。その後、インターネットの普及により情報発信に大きな変化が起き、風評被害対策のためのPRに加え、賑わい復興も含めたソフト面での整備が行われるようになった。これは、被災によって減少した観光客が戻るまでの期間を短くするための配慮として重要であるといえる。しかし、元来流動的な観光客への避難指示や避難地の整備などの対応は未だ不十分であり、特に近年急激に増加した外国人観光客への対応は、災害が発生して初めて取り組むといった現状を捉えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各自のフィールドでの調査・研究が着実に進めることができ、一応の成果が上がっている。同時に研究者間の連携が進んだ。環磐梯山では猪苗代町をベースにしたスタディツアーを開発することができ、災害伝承に活用可能なツアープログラムの骨格と要素を明らかにした。また、研究者間の連携構築により、歴史研究が進められ、ツアーを一過性のものとせずにスタディツアーに昇格させる可能性が生まれた。 岩手県宮古市では、学ぶ防災や黒森山ウォークなどは地域に根付き、その先の展開としてジオパークと連携するプログラム開発を進める一歩を築くことができた。観光の面白さは、提供するプログラムによって対象者が異なり、より多様化することにあると発見することができた。 救荒備荒録をもとにした本草学では、文献収集と解析が進み、次年度に向けた可能性を開くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)災害伝承をもとにしたスタディツアーの高度化研究として、環磐梯山における災害伝承プログラムのスタディツアー化を進める。来年度は磐梯町をベースに、フェノロジーカレンダーを制作することによって、多様な地元人材との交流を進め、スタディツアーの深化を図る。 (2)復興ツーリズムの多様化として、宮古市において、学ぶ防災(2012)、黒森山ウォーク(2012)、ジオのカーニバル(2019)と展開をしてきたが、今後はより若い世代への継承につながるプログラムの模索としてみちのく潮風トレイルおよび津波伝承施設との連携を図る。 (3)災害備荒録から今日までの継承調査として、今年度まとめた調査をもとにした現地調査を実施する。 (4)田口亮男氏標本の整理および『磐梯之部』の記述との照合を完了し,1906年および1907年ごろの磐梯山中腹の植生や景観の推定を行う。これに関わる論文を書く。白井徳次の「噴火の湯」などの温泉事業の資料を収集する。 (5)観光白書ならびに内閣府資料をもとに、「観光危機に伴う被害程度とレジリエンスの関係性」に取り組む。現時点では、広域ではなくある程度対象地を絞っているところである。
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