研究課題/領域番号 |
19H04384
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
杜 国慶 立教大学, 観光学部, 教授 (40350300)
|
研究分担者 |
佐藤 大祐 立教大学, 観光学部, 教授 (20405616)
五艘 みどり 帝京大学, 経済学部, 准教授 (00508608)
鄭 玉姫 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 助教 (80742163)
李 崗 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 専任講師 (60832657)
板垣 武尊 和洋女子大学, 人文学部, 助教 (40846763)
澁谷 和樹 立教大学, 観光学部, 助教 (10846455)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スマート・ツーリズム / 情報通信技術 / 観光情報 / 観光者 / 観光行動 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
本研究は観光実態の新たな変化に注目し、スマート・ツーリズムという枠組で、ICTの革新的な発達による観光の変容を考察することを、研究目的とする。2019年度は、情報伝達のリアルタイム性による観光者と観光地域の関係、観光情報個人化による観光行動、観光者同士の情報コミュニティ形成と観光者の役割変化について研究した。 具体的に、佐藤大祐が日本とハワイで観光者のスマートフォンを通じた情報取得と観光行動との関係について調査し,スマート・ツーリズムの形態と類型を解明した。五艘は新型肺炎の影響でイタリアでの調査が難しくなり、日本国内での調査を行った。鄭は先行研究のレビューと韓国での現地調査を行い、スマート・ツーリズムによる環境整備は観光者だけでなく地域住民も享受することが分かった。李は中国の観光政策と研究動向について資料収集を行った上で、現地調査を行った。安徽省の観光政策とスマート・ツーリズムの推進状況について、現地研究者(安徽師範大学)と意見を交換し、旅行会社へ聞き取り調査を実施して状況を把握した。板垣はカンボジアを対象として、バックパッカーの情報収集の変化に伴う観光地域の変容を明らかにすることを目指していたが、新型肺炎の拡大により現地調査はできなくなり、ガイドブックとインターネットによる資料収集行った。澁谷はビッグデータ活用について文献をレビューし、観光地でのビッグデータ活用事例の収集と視察を行った。代表者杜は研究全体の総括と調整をするとともに、観光情報伝達と観光者の情報コミュニティ形成の変化について長野県、東北地方、北海道を対象として調査した。 また、研究会の開催および電子メールによる綿密に意見交換を行い、研究の進捗状況を互いに把握した。一部の研究成果は学会発表と学術誌への投稿を行い、市民講座を通して社会還元の責務を果たした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担者各自で収集した情報を共有したうえで、入手した資料の分析を行っている。一部の研究成果は論文としてまとめており、投稿および学会発表を準備している。 具体的には、日本とハワイで観光者のスマートフォンを通じた情報取得と観光行動との関係について調査し,スマート・ツーリズムの形態と類型を解明した。国内の旅行会社(大手企業3社、イタリア専門企業1社)へ、海外観光者のSNS活用および活用前後の観光行動の変化について調査し、企業と観光者のSNSやウェブサイトの活用状況および旅行動機への影響を解明した。ソウル市と釜山市を対象として、韓国のスマート・ツーリズムの実態を調べるための現地調査を実施した。とくに、ソウル市運営の自転車レンタルサービスを注目し、調査の結果を取りまとめている。カンボジアを扱ったメディア(ガイドブック・映像資料)の収集・記事分析により、バックパッカーの集積過程、ガイドブックの経年変化と観光地認識との関係、バックパッカーの関心点の変容を明らかにした。ビッグデータに関する文献レビューを行い、ビッグデータ批判に対して観光研究から対話をすることが、スマート・ツーリズムの利点と問題点を明らかにするために必要な作業であると結論付けた。その検証の一環として、ビッグデータ活用事例である京都市が公開する「観光快適度」や金沢市と富山市のシェアサイクルを事例に、ビッグデータがいかに活用され、観光支援サービスとしていかに組み込まれているのかについて視察した。
|
今後の研究の推進方策 |
観光客の国籍や年齢層、使用アプリなど調査対象を広げると共に,アプリ運営企業や掲載店舗など情報発信側の視点での研究も実施することで,スマート・ツーリズムの全容を解明する。 引き続き日本で海外旅行を扱う企業への調査を実施する。インタビューは海外観光客を扱う旅行会社へ継続的に調査するとともに、対象観光産業を拡大して、運輸業、出版業、インターネット広告業へも実施する予定である。 韓国において、観光者の観光経験情報発信について調査を実施する。近年、韓国人は自分の日常生活をSNSに掲載する傾向が目立っている。それに注目して、アンケート調査とともに、SNSで情報を収集して分析し、韓国人の観光経験に対する情報発信の特徴を明らかにする。中国において、スマート・ツーリズムに関する文献資料を引き続き収集し、現地調査から得たデータを整理・分析する。新型コロナウイルスの影響で中国への現地調査が困難な場合、非常事態下の観光地対策におけるICT技術の活用に注目して研究する。カンボジアにおいて、2~3月に現地調査が可能である場合のみ、バックパッカーへの聞き取り調査、観光産業や諸施設への聞き取り調査を実施する予定である。現地調査が実現できなかった場合、Google Mapによる土地利用調査と観光施設の口コミの分析によって、観光地域の変容を解明する。 ビッグデータ活用において、ビッグデータを活用した観光支援サービスがいかに目的地内の観光行動に影響を与えるのかについての実証的な分析を行っていく。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、観光者への調査が実施できるか不透明であることから、観光地運営者や行政へのインタビュー調査やアンケート調査も検討している。また、観光支援サービスに対する口コミを資料とし、ビッグデータの活用に対する観光者の認識についての分析も検討中である。
|