研究課題
本研究の目的は、明治大正昭和期に活躍した日本人作家田村俊子が、日中戦時下に中央公論社の特派員として中国に渡り、60歳で上海で客死する直前まで丸3年間刊行し続けた中国語雑誌『女声』の分析をすることにある。本誌は、日本人作家が中国女性のために、職業を持ち自立した生活を送るためには、因習的な生活を脱し、女性の教育の向上を目指す必要を訴えるための啓蒙雑誌として刊行された。本誌研究は中国主体の研究であったが、本研究では初めて編集長田村俊子の仕事に焦点を当て、『女声』とはどのような雑誌だったのかを明らかにすることができた。、結論としては日本軍の資金や物資の提供を受けながらも、日本軍のプロパガンダ雑誌に陥らないように編集長の田村俊子が工夫を重ねていた様が明らかになった。研究を進めた4年間、編集地であった上海のみならず田村俊子が18年間身をおいたカナダや合衆国にも取材に赴き、1920年代から1930年代の日系人社会の様態の調査も行った。現地において社会的地位が低く差別にあいながらも労働者として力強く生き抜いていく日本人のための日本語新聞の発刊していた田村の活動や、労働者同士人種を超えた連帯経験など田村の足跡を調査し、田村俊子が『女声』発刊に到る思想の源に迫った。月刊誌36冊分を研究定例会で1巻ずつ読み、その研究成果をまとめ、出版助成を受けて最終年度である2023年12月25日に刊行をし終えた。その内容は、田村俊子編集長の仕事、各記事の分析、特に映画評、演劇評、児童文学、文芸欄、親交が深かった中国人作家との交流分析、関露の『女声』参加の前後の足跡分析や彼女が書いた記事の分析、巻頭言とあとがきの分析、大戦時の世界網記事の分析、当時の時代情勢の上から見た『女声』分析、読者交流欄分析などほとんど網羅的に分析をし終えることができた。上梓した本は後述した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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