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2019 年度 実績報告書

BL等の表現の国際的な広がりと、各国での現実のLGBTとの社会的関係の国際比較

研究課題

研究課題/領域番号 19H04388
研究機関明治大学

研究代表者

藤本 由香里  明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (50515939)

研究分担者 石田 仁  明治学院大学, 社会学部, 研究員 (40601810)
ウェルカー ジェームズ  神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (40710174)
長池 一美  大分大学, 国際教育研究推進機構, 教授 (90364992)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードLGBT / BL / 国際比較 / 表現と現実 / 社会学的意識調査 / 伝播と変容
研究実績の概要

2019年度には藤本・長池・ウェルカーの三人でニューヨークで行われたクィア&コミックスで発表。その後、藤本は大英博物館MMANGA展に参加し、国際交流基金主催の関連イベントで発表。それを皮切りに藤本とウェルカーはフィリピンのBLイベント、カナダのモントリオールでのOTAKTHON&レインボーパレード、メキシコのモンテレーとメキシコシティでのBLイベント、台湾および韓国の百合イベントを調査。ウェルカーと長池でタイ開催のAASで発表・調査、マレーシアのコミックイベントも調査。ウェルカー単独でオーストラリアの調査を行うなど、数多くの海外調査と発表を行った。
その結果、やはり海外ではLGBT当事者がBL・百合イベントの主催にかかわるケースが多いこと、出展者も程度の差はあれBLファンとLGBT当事者の両方が入り混じっていることが確認された。全体にアジアの方が当事者が前面に出ることは少なく、その国や地域で同性婚が認められているかどうかとイベントの位置づけにかなり強い相関があることが観察された。とくに東アジアはかなり当事者に抑圧的であると感じられた。
一方、長池は2019年度秋からサバティカルに入り、フィリピンのアテネオ大学に籍をおきつつ、タイも含めて、BLファンや出版社、LGBT当事者たちにグループインタビューおよび単独インタビューを行うとともに、現地のBL作品を多数調査・購入した。
国内の社会意識調査を担当する石田は、調査会社に依頼して1万サンプルの予備調査を行い、BLファン・非ファン層を特定するための質問の妥当性や各年代ごとの出現率などを検討。おおよそ予想された出現率が得られた。
また、この科研費の発想のきっかけになった2017年の国際学会を、ウェルカー編の論文集『BLが開く扉』として青土社から出版。藤本・石田も書き下ろしで参画し、同論文集には、メンバー4人の論文が掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2019年度中はウェルカーがサバティカル期間中だったため、藤本がそれに同行する形で、メキシコ2回(モンテレーとメキシコシティ)、カナダのモントリオール、フィリピン、台湾、韓国の調査(&発表)を行うことができた。また、長池とウェルカーでタイとマレーシア、ウェルカー単独でオーストラリアの調査も行っている。秋からは長池もサバティカルに入ったため、東南アジア(フィリピン・タイ・マレーシア・シンガポール)での調査も精力的に進めることができた。全体にこの1年の海外調査はかなり充実しており、これにより現地の資料を多数収集するとともに、各地域での状況の違いがなり明確になってきた。さらに深い研究を進めるための各国の協力者も多数得ることができた。
長池は主に東南アジア地域でBLアーティスト、ファン、出版社等を対象に「BLとLGBTQ」についてインタビュー調査を行い、その調査を基にした分析を始めた。フィリピンでは20人以上のBLアーティスト、ファン、出版社関係者、タイではLGBTQ研究が活発に行われているタマサート大学の学生及び研究者8名、マレーシアでは東南アジア最大のComic Fiestaの参加者(アーティストを含む)8名、シンガポールではシンガポール国立大学の学生4名、研究者1名、アーティスト1名にインタビュー調査を行うことができた。
また藤本は世界的に有名なゲイアートの巨匠でありマンガ家でもある田亀源五郎にインタビューを行い、そこから今まで見えていなかったBLとゲイコミックの重なりの部分が明らかになった。これは貴重な成果であるとともに今後の研究への手がかりとなる。
国内調査班では、きっちりとした1万サンプルの予備調査を行い、ほぼ予想した出現率が得られたが、20代の女性の出現率がやや少なかったため、2020年度の本調査はさらにサンプル数を増やして行うことを決定した。

今後の研究の推進方策

■今年度は集中して、BLの読者と非読者を対象に、石田を責任者として、社会学的意識調査を行う。
①ジェンダー平等感覚や性的マイノリティへの寛容さなどを、BLの読者と非読者で比較する。具体的には、20~59歳の女性を対象としたインターネットモニタを対象とするクローズド型ウェブ調査で、20代・30代・40代・50代のBL読者・非BL読者を 各100サンプル、計800サンプルになるように割り付ける。
②加えて、同サンプル数を目標にゲイ・バイ男性対象にオープン型ウェブ調査も行い、ジェンダー平等感覚やBLに対する意識などをたずねる。この調査の知見からも、BLファンとLGBT当事者の連帯の可能性を探ることが期待される。対象は20-59歳のゲイ・バイセクシュアル男性。GPS アプリ、各種SNSなどの誘導広告で調査への参加を依頼する。サンプル獲得目標数はBL読者、非読者が各400サンプル、計800サンプル。
■海外調査としては、今年度はブラジルのAnime Friends、LGBT団体、LGBT関連書籍出版社などの調査、ドイツ・フランスのYaoi/Yuriイベントの調査を行う。ブラジルは大統領がLGBTに否定的だという点に注目。
■ウェルカーがMechademiaの特集“Queer(ing)”の責任編集者として序文を書き、世界各国のBL・百合の状況やLGBTの現状 を伝えるコラムを依頼・編集、メキシコとフィリピンのBLイベント主催者の対談をコーディネート。またミシガン大学出版局の新シリーズ「Global Queer Asias」を共同編集予定。また、藤本が日本マンガ学会で「BLとメディア」シンポジウムの企画・司会を行うほか、『BLの教科書』(有斐閣)にウェルカーとともに執筆予定。「ロマンJUNE」も分析。長池は東南アジアほか海外で収集したBL作品・資料を分析。インタビュー分析も行っていく。

  • 研究成果

    (45件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 12件、 招待講演 21件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] It Should Be Stunning: Thoughts on Gender, Gender Studies, and the Future2020

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 雑誌名

      Gender and Sexuality

      巻: 15 ページ: 83-87

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ハッテン場:言葉を排した悩めるゲーム2020

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      LGBTのひろば:ゲイの出会い編

      巻: 1 ページ: 137-142

  • [雑誌論文] アプリ:インストールからリアルまで2020

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      LGBTのひろば:ゲイの出会い編

      巻: 1 ページ: 128-134

  • [雑誌論文] 「おっさんずラブ』という分岐点」2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 雑誌名

      『BLが開く扉』

      巻: 1 ページ: 131-150

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 世界マンガ紀行・台湾編2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 雑誌名

      AIDE新聞:コミックマーケットカタログ

      巻: C97 ページ: 1312-19

  • [雑誌論文] 『男の口紅』再考~BLとの比較で考える2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 雑誌名

      アックス

      巻: 12月号 ページ: 114-115

  • [雑誌論文] 大英博物館で日本マンガ展!2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 雑誌名

      AIDE新聞:コミックマーケットカタログ

      巻: C96 ページ: 1314-21

  • [雑誌論文] ここからすべては始まった~橋本治の少女マンガ論2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 雑誌名

      ユリイカ 総特集:橋本治

      巻: 5月臨時増刊号 ページ: 88-95

  • [雑誌論文] 序:ボーイズラブ(BL)とそのアジアにおける変容・変貌・変化(トランスフィギュレーション)2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 雑誌名

      『BLが開く扉』

      巻: 1 ページ: 9-26

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「腐男子になる」欲望:東アジアにおける異性愛男性BLファン比較研究2019

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 雑誌名

      『BLが開く扉』

      巻: 1 ページ: 77-96

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 東京・新宿のゲイ・シーンにおける出会いと多様性2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      『BLが開く扉』

      巻: 1 ページ: 151-169

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 性的マイノリティの安全な出会い:SNS以前・以後の歴史を振り返る2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      季刊セクシュアリティ

      巻: 93 ページ: 60-69

  • [雑誌論文] 学校現場と性的マイノリティ:教職員にできること2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      日本教育

      巻: 491 ページ: 16-19

  • [雑誌論文] ハッテン場2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 雑誌名

      『クィアと法:性規範の解放/開放のために』

      巻: 1 ページ: 75-110

  • [雑誌論文] 「日本のLGBT30年史」2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁・沢部ひとみ・谷口洋幸・三橋順子・山縣真矢
    • 雑誌名

      Beyond

      巻: 5 ページ: 11-25

  • [学会発表] 少女マンガの中の女性同士の愛2020

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      ソウル大学
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] LGBT表現における歴史と現在2020

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      中京大学
    • 招待講演
  • [学会発表] Japanese Boys Love (BL) Media Transforming and Transformed by Gender and Sexuality around Asia”2020

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      シドニー大学(決定していたがコロナにより中止)
    • 招待講演
  • [学会発表] “Beyond Boys Love in Japan: Thoughts on Asian Transfigurations of BL Media”2020

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      ラ・トローブ大学(メルボルン)(決定していたがコロナにより中止)
    • 招待講演
  • [学会発表] “From Japan with (Boys) Love: BL Media and the Transfiguration of Gender and Sexuality in Asia”2020

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      ソウル大学
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] To Asia with (Boys) Love: BL Media and the Transfiguration of Gender and Sexuality”2020

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      東京大学
    • 招待講演
  • [学会発表] “Japanese Men’s Desires and Hopes to “Become” Fudanshi (“rotten boy”), Shota and Otoko no ko : Mediating Utopian/Dystopian Motherhood”2020

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 学会等名
      シンガポール国立大学
    • 招待講演
  • [学会発表] “Are There Any Texts in BL Studies? Rethinking Narrativity of BL Ethnicity and Eroticism in Japan and South East Asia”2020

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 学会等名
      18th Annual International Conference on Japanese Studies学会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 「同性婚に関する意識調査結果 速報」2020

    • 著者名/発表者名
      石田仁・岩本健良・釜野さおり
    • 学会等名
      結婚の自由をすべての人に(Marriage for All Japan)一周年記念行事
  • [学会発表] 出版媒体とマンガ表現2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      早稲田大学ワークショップ「マンガの体験、メディアの体験」
    • 招待講演
  • [学会発表] 表現:「性別」の問い直し2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      明治大学ジェンダーセンター10周年記念パネルセッション
    • 招待講演
  • [学会発表] Sexual Differentiations:Beyond the Gender Binary?2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      Oops! Summer Festa
    • 招待講演
  • [学会発表] Love and Desire between women in Girls’ Manga2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      Japan Foundation(London)主催・大英博物館マンガ展関連講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] The Heyday of Cross-dressing Boys : 21st Century Boys’ Manga2019

    • 著者名/発表者名
      藤本由香里
    • 学会等名
      Queeas&Comics
    • 国際学会
  • [学会発表] “‘Boys Love’ Manga, Anime, and More in Asia: Transforming Media, Gender, and Sexuality2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      イベロアメリカ大学
    • 招待講演
  • [学会発表] “BL Media Transformed in Asia: From Shonen’ai, Yaoi, and Boys Love to Danmei, Series Y, and Beyond”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      台湾大学
    • 招待講演
  • [学会発表] “Boys Love (BL) Manga and Beyond: Tracing the History of a Very Queer Genre”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      Oops! Summer Festa
    • 招待講演
  • [学会発表] “Boys Love, Yuri, & More: Tracing the History of ‘Queer’ (But Not Necessarily LGBT) Media in Japan”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      Yurithon(Otakuthon)
  • [学会発表] Boys Love? BL? Yaoi? Shonen’ai? Or...?2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      アテネオ(・ド・マニラ)大学
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Looking Outward, Looking Inward: Kiyooka Sumiko’s Transnational, Transhistoric Lesbian Engagements”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      AAS-In-Asia
    • 国際学会
  • [学会発表] Kiyooka Sumiko and the Possibility of a Lesbian Gaze in Late 1960s Japan2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      サンフランシスコ州立大学
    • 国際学会
  • [学会発表] “It Should Be Stunning: Thoughts on Gender, Gender Studies, and the Future”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      国際基督教大学
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ”The Transformative Power of Boys Love (BL) Media in Asia” (Jeremiah Lecture Series)2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      オレゴン大学
    • 招待講演
  • [学会発表] “What We Can Learn from the Circulation and Transformation of Boys Love (BL) Media around Asia”2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      Manga University of New York (series)
    • 招待講演
  • [学会発表] Queer Manga: History and Cultural Context2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー
    • 学会等名
      Queers & Comics
    • 国際学会
  • [学会発表] (基調講演)) “Japanese Men’s Desires and Hopes to “Become” Fudanshi (“rotten boy”), Shota and Otoko no ko : Mediating Utopian/Dystopian Motherhood”2019

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 学会等名
      Mechademia学会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Questioning Female “Perversion” in Mori Mari’s Pre-BL Trilogy: The Emergence of Women Writing/Reading Male Homosexual Fantasies”2019

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 学会等名
      AAS-In-Asia
    • 国際学会
  • [学会発表] Queer Manga: History and Cultural Context2019

    • 著者名/発表者名
      長池一美
    • 学会等名
      Queers & Comics
    • 国際学会
  • [学会発表] 「ブルーボーイ裁判はどのように歴史語りされ何が語られなかったか」2019

    • 著者名/発表者名
      石田仁
    • 学会等名
      中央大学
    • 招待講演
  • [図書] BLが開く扉2019

    • 著者名/発表者名
      ジェームス・ウェルカー編
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      青土社
    • ISBN
      978-4-7917-7225-4

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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