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2020 年度 実績報告書

性販売女性の支援活動に関する日韓比較同時代史研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H04389
研究機関立教大学

研究代表者

小野沢 あかね  立教大学, 文学部, 教授 (00276700)

研究分担者 吉見 義明  中央大学, 企業研究所, 客員研究員 (40102884)
金 富子  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード性売買 / 性売買防止法 / 売春防止法 / 性売買問題解決のための全国連帯 / 大邱女性人権センター / 性搾取 / ムンチ / 買春
研究実績の概要

2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のために海外での調査が不可能となったが、オンライン研究会の開催、翻訳、HPの作成などに力をいれることにより、重要な知見を得ることができた。また、本を出版することもできた。
①日本と韓国における性売買女性の支援活動に関する情報発信を目的とするHPの作成準備を進めた。性売買に関する専門的な知見を提示するだけでなく、大学生等が理解できるよう入門編にも力を入れたコンテンツの作成を進めた(小野沢、金、吉見)。②AV出演強要被害者や性売買女性の相談支援を行っているぱっぷすとの研究会を行い、性売買女性の現状について重要な知見を得ることができた。③韓国の大邱女性人権センターで代表をつとめ、20年間にわたって性売買女性の脱性売買支援を行ってきたシンパク・ジニョンさんの著作『性売買・常識のブラックホール』の翻訳を完成させた。金富子監訳・小野沢あかね解説として、2022年5月下旬に出版することが決まっている。本書から韓国での性売買の詳細な実態と、ヨーロッパの性売買政策(新廃止主義・合法化)の現状についての重要な知見を得ることができ、日本では類書がない。④韓国の著名なフェミニスト社会学者である李娜榮氏の論文「性売買は「罪」なのか、「女性嫌悪」に基づく構造的暴力なのか」を翻訳した(小野沢)。同論文は、性売買女性を非犯罪化すべき論拠と、この問題に関する韓国内の論争を整理したもので、日本には類書がない。⑤金富子・小野沢あかね編著『性暴力被害を聴く―「慰安婦」から現代の性搾取へ』岩波書店を出版した。本書は、性搾取被害者の声をどう聴くのかということに関する、日韓の活動家や歴史家による論考をまとめたものであり、当事者との連帯をめざす本科研共同研究に重要な知見を提供するものである。⑥⑤の出版を機に日韓オンラインシンポジウムを開催した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年4月にたてた研究計画は、新型コロナウィルスの感染拡大にともない一部変更を余儀なくされた。しかし、国内出張や海外との行き来を行わずとも本研究課題を進めることのできる方法を駆使し、研究を概ね順調に進展させることができたと言える。オンラインの使用、韓国の重要文献の翻訳、HPの作成などである。以下に、2020年4月時点の計画とその変更内容・達成状況を具体的に見ていく。
①日韓の性売買女性の支援活動に関する情報発信を目的としたHPの作成は、概ね計画通りすすめることができた。②4月時点では韓国における性売買経験当事者ネットワーク・ムンチのブログや本の翻訳を目指すことを計画した。しかしその後、前述のシンパク・ジニョン『性売買、常識のブラックホール』の方を先に翻訳した方が良いと考え、同書の翻訳を達成した。ムンチの本は2021年度に翻訳することにした。③4月時点では、韓国の「性売買問題解決のための全国連帯」と協力してヨーロッパの性売買経験当事者を招聘したシンポジウムを開催することや、台湾調査を計画したが、新型コロナウィルスの感染拡大のために実現できなかった。しかしそのかわりに、シンパク氏の本の翻訳により、同書中で詳しく述べられているヨーロッパの性売買政策の現状と同地の活動家たちの情報についての重要な知見を得ることができた。④日本における性売買と脱性売買支援活動については、「ぱっぷす」との研究会などで知見を得ることができた。しかし、沖縄での性売買調査は新型コロナウィルスの感染拡大のために実現できなかった。そこで沖縄調査旅費に予定していた金額(8万円)を韓国での性売買当事者女性の非犯罪化に関する李娜栄氏の論考「性売買は「罪」なのか、「女性嫌悪」に基づく構造的暴力なのか」の翻訳に使用し、性売買に関する重要な知見を得ることができた。

今後の研究の推進方策

2021年度以降の研究の推進も新型コロナウィルスの感染状況に大きく左右されると思われる。本科研共同研究出発時点の計画の達成を目指しつつも、感染状況の悪化の際には、別の方策で研究が進められるよう熟慮し、2021年度以降は下記の活動を計画している。
①日本と韓国の性販売女性の支援活動に関する情報発信を目的に、これまでのメンバー小野沢あかね、金富子、吉見義明に加え、新たに中里見博を分担者に迎えて、HPの制作を行ない、完成させる。②金富子を中心に、これまでの活動で懇意となった韓国の研究者・活動家とのオンライン研究会を行なう。③小野沢あかね、吉見義明、中里見博で、日本における性販売女性の脱性売買支援の調査を行なうとともに、脱性売買支援活動を行なっている団体、ぱっぷすやコラボとの研究会を開催する。④小野沢あかねは沖縄での性売買調査を行う。⑤コロナ感染状況が解決したならば、当初の計画通り、研究代表者・分担者・協力者でスウェーデン・ドイツに赴き、両国における性売買政策と性販売女性の脱性売買支援活動に関する調査を実行する。スウェーデンは、性売買業者のみならず、買春を処罰し、性販売女性の非犯罪者化とその生活支援と脱性売買支援を行なうといういわゆる北欧モデルを最初に実現した国である。一方のドイツは対照的に、性を買うこととその取引業者を合法化した国である。対照的な2国の現在の状況について調査したい。しかし、感染拡大で上記の調査が実現出来ない場合には、韓国における性売買関連重要文献の翻訳を行うことにする。⑥2020年度に翻訳したシンパク・ジニョン『性売買、常識のブラックホール』に解説を付して出版を目指し、出版にあたっての日韓シンポジウムを計画する。
⑦韓国の性売買経験当事者ネットワーク・ムンチの本を翻訳し、出版する(小野沢・金)。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 山口県における近代公娼制の展開2021

    • 著者名/発表者名
      吉見義明
    • 雑誌名

      中央大学論集

      巻: 42 ページ: 11-24

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書評:金富子・金栄『植民地遊廓』――第Ⅱ部を中心に2020

    • 著者名/発表者名
      吉見義明
    • 雑誌名

      歴史科学

      巻: 243 ページ: 32-34

  • [学会発表] ラムザイヤー氏「娼妓契約論」のどこが問題か2021

    • 著者名/発表者名
      小野沢あかね
    • 学会等名
      Fight for Justice・歴史学研究会・日本史研究会・歴史科学協議会・歴史教育者協議会
  • [学会発表] ラムザイヤー氏「慰安婦」論の何が問題か2021

    • 著者名/発表者名
      吉見義明
    • 学会等名
      Fight for Justice・歴史学研究会・日本史研究会・歴史科学協議会・歴史教育者協議会
  • [学会発表] 日本/植民地の公娼制2021

    • 著者名/発表者名
      金富子
    • 学会等名
      日本軍「慰安婦」問題研究会(韓国)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 性暴力被害を聴く――「慰安婦」から現代の性搾取へ2020

    • 著者名/発表者名
      金富子・小野沢あかね
    • 総ページ数
      284
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000613828

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公開日: 2022-12-28  

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