研究課題
本研究においては、ニオブ製超伝導加速空洞の高Q値化・高加速勾配化を目指して、(1)ニオブ表面の最適化、(2)ニオブ表面に捕捉される磁束の制御をテーマに研究を進めた。(1)ニオブ表面の最適化については、真空炉ベーキングと呼ばれる新しい表面処理手法を開発した。ニオブ表面には安定状態として酸化膜が形成されているが、真空炉中での熱処理を施すことで、表面の酸素をニオブ中に拡散させている。この熱処理温度を変えて、酸素の拡散度合を制御することで空洞性能が劇的に変わることが分かった。例えば、300~400度の処理では非常に高いQ値を実現、約200度の処理では高Q値かつ高勾配を実現、約600度の処理では非常に小さな残留抵抗を実現、と言うように、空洞使用用途に応じて最適な熱処理パラメータを選択することで、超伝導加速空洞の高性能化が実現できるようになった。次に、(2)ニオブ表面に捕捉される磁束に関しての研究を推進した。高周波を励振した際に、捕捉磁束は表面抵抗の要因となり空洞性能を劣化させるため、高Q値の実現のためには、空洞冷却時における磁束制御が必須である。本研究では、磁気光学イメージング(MO)法を用いて、超伝導転移の際の磁束の動きをリアルタイムで観測することにより、磁束の振る舞いについての理解を深めた。加速器グレードの超高純度ニオブサンプルを用いて実験を行い、数~数100 Oe程度の磁場中冷却において磁束がある程度凝集してバンドル(クラスター)を形成する中間混合状態が出現する、という知見を得た。これは捕捉磁束のメカニズム、高周波における捕捉磁束による表面抵抗の起源のヒントとなるものであり、非常に興味深い実験結果である。以上の(1)および(2)の研究成果は、それぞれ査読付き論文としてまとめられ、PTEPおよびPhysical Review Bから出版された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Physical Review B
巻: 104 ページ: 1, 7
10.1103/PhysRevB.104.064504
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 071G01 ページ: 1, 8
10.1093/ptep/ptab056