本研究では、溶液中で光励起された金属錯体分子が緩和する際に生じるコヒーレントな振動の局所的な構造変化を時間分解X線吸収分光によって原子分解能で観測することを目的とした。この目的に沿って時間分解能を半値幅で70フェムト秒まで高め、光励起直後から銅(I)錯体が振動していく様子を追跡することに成功した。また、入射X線の波長によって観測可能な振動が変化すること、すなわち各々の振動に対する感度が内殻電子の双極子遷移モーメントの大きさに関連することが分かった。この発見は予想していなかった本研究の独自性であり、超高速X線科学の発展に向けた基礎的な知識として重要である。
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