COVID-19により、私達の社会での“距離”は大きく変化した。「ソーシャルディスタンス」は、感染防止のための公衆衛生的物理的距離である一方心理的な距離の現れである。過去にはアメリカで人種問題から白人と黒人と言われる人たちの関係の分析が行われていたこともあった。距離は「生物としての行動や人間の生理から決まる生理人類学的距離」「文化的生活を営むことによって生まれる文化心理的距離」「社会や集団・公共など概念やしくみによってうまれる社会物理的距離」等があると考えられている。私達はそれら距離を「関係」とみなし、近づくこと、遠ざけること、保つことにより、接触の程度の作り方で、コミュニケーションを創造できた。
しかしそれらはCOVID-19により今までの決められていた距離感の「パラメーター」や「レギュレーション」が大きく変化させられた。さらに、我々がこれまで「常識」と思っていた「距離」やそれによる関係が大きく変化した。COVID-19により「絡み合う社会」「動き続ける社会」が顕在化したといえ、「安全」「安心」「安定」とはかけはなれ、「社会の意味」自体も不確かなものとなり、避難所などへの分析に適用できることがわかった。
九州大学応用生理人類学研究センター レジリエンス・デザイン部門では、これまで人間生活のにおける行動、特に避難所での行動を物理的・生理的・心理的に解析し、その各要素の関連を読み解き、人間行動の理解へとつなげる理論や方法・アプリケーションの構築・開発を行った。 人間の行動量を映像処理と数理統計、人間の生理値を心拍数や活動量、人間の心理をアフォーダンスやビッグファイブ(性格特性評価)を計測し、それらの関係を評価することで行動の意味やその解釈・計測の方法を構築した。
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