研究課題/領域番号 |
19H04414
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
横山 清子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (50174868)
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研究分担者 |
鈴木 賢一 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (00242842)
内田 恵 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (00569254)
梅谷 智弘 甲南大学, 知能情報学部, 准教授 (10397630)
塙 大 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (50422506)
渡邊 裕司 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 准教授 (60314100)
明智 龍男 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80281682)
奥山 徹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80349349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンビエントセンサ / 療養環境 / 安全 / 快適 / IoTシステム / 機械学習 / 深層学習 / デプスカメラ |
研究実績の概要 |
アンビエントセンサとして、ベッド面に敷く面圧分布センサ、病衣に装着する加速度センサ、布団に装着する温湿度センサの情報を連続的に収集し、機械学習あるいは信号処理により、仰臥位を保つ人の行動や心身状態を推定して、その結果に応じてSlackにメッセージを送信、もしくは照明の照度・色温度を制御するシステムを試作した。また、立体物の凹凸情報を測定する赤外線深度カメラの情報から、ベッド上の人の寝返り、起き上がりなどの動作を、深層学習に基づき推定する手法を開発した。 ベッド面における面圧センサと病衣に装着した加速度センサ情報の信号処理により、寝返り、起き上がり、ベッド上での軽い動き(スマートフォンの参照など)の識別が可能であることを確認できた。今後、夜間覚醒の検出やせん妄発症予測に展開するために研究分担者が収集を始めている臨床での面圧センサデータと、同時に得られる夜間覚醒、せん妄発症などの記録データを用い、機械学習により夜間覚醒やせん妄発症を検出・予測する学習機を作成して試作システムに組み込む予定である。これにより、夜間覚醒やせん妄発症あるいは予測情報の検出時に医療スタッフの携帯端末に情報を伝達するシステム実装の可能性を今年度の研究により検証できたと考えている。寝具に装着した温湿度センサを用い、実験室実験では布団のめくれ上がりやベッドからの離脱の検出が可能であることが確認できており、病棟での活用だけでなく、介護施設や保育所などでの見守り、体温異常の自動検出などへの応用の可能性も得ることができた。 デプスカメラと深層学習を用いたベッド上での人の動作推定については、深層学習のパラメータ設定と得られる結果の特徴との関連などを明らかにすることができた。しかし、寝返りの仕方などに個人差が大きいため、汎用的な利用のためには、今後さらなるデータ収集が必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の実施計画の一つ目である「アンビエントセンサネットワークの実験室環境における実装」については、面圧センサ、加速度センサの情報を連続取得・保存し、機械学習の学習機の出力結果に応じて、ベッドからの起き上がりや離脱に対して、Slackにメッセージを送信、および睡眠を想定したベッド上での体動の減少に応じて照明の照度を落とし、一方で体動の増加による覚醒検知に応じて照度を増加させるシステムとして当初の計画以上の実現ができたと考えている。 二つ目の計画である「面圧センサ、寝具や病衣に装着した加速度センサや温湿度センサ、デプスカメラの情報と機械学習・深層学習を組み合わせた健常者を対象とした寝姿勢検出」について、面圧センサと加速度センサ、機械学習を組み合わせた寝返り、起き上がりの検出、温湿度センサと機械学習を組み合わせた布団のめくれ上がりやベッドからの離脱の検出、デプスカメラと深層学習を組み合わせたベッド上での動作の検出の可能性検証を実施することができ、おおむね計画どおりに進展したと考えている。 三つ目の計画である「療養環境におけるアンビエントセンサを用いた快適性評価の可能性検証」として、健常者を対象として、高ストレス状態とリラックス状態を誘導し、心拍変動から推定されるストレス/リラックス状態が、加速度センサと座面圧センサで推定される行動情報で評価できるかの実験的検証を行った。座面圧センサで検出される姿勢変化とストレス/リラックス度合いの変動との関連の可能性は見られたが、実験被験者数が少ないこと、センサー情報から抽出する特徴量の工夫の必要性など、今後に課題を残す結果となった。 これらを総合的に勘案して、令和元年度はおおむね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に試作したアンビエントセンサネットワークシステムについて、実験室実験の例数を増加させ、寝姿勢の変化や起き上がり、布団のめくれ上がりや体温変化の検出に適した学習機の作成を行う予定である。面圧センサ、加速度センサ、温湿度センサの情報を入力とし、機械学習を用いた寝姿勢検出や睡眠・覚醒の判定等の結果を論文にまとめる予定である。 さらに、病棟でデータ収集を行う面圧センサデータの信号処理および機械学習による患者のベッド上での動作や病態変化の検出方法の検討を行う。特に、せん妄発症患者の発症時の特徴的な動作の検出とせん妄発症直前のセンサ情報の特徴抽出および機械学習を用いたアンビエントセンサ情報によるせん妄予測の可能性検証を行う予定である。令和元年度に試作したシステムについて、学習機にせん妄検出とせん妄予測の機能を追加し、それに対応してSlackにメッセージを送信できるように改良する。 臨床でのせん妄予測精度向上のために、名古屋市立大学病院の電子カルテ情報を活用したせん妄発症リスクを推定する学習機作成のために、せん妄発症患者のデータ数百名分および同数の無発症入院患者のデータから、既往症、投薬情報、生活習慣等の特徴を統計解析および機械学習により抽出する。
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