研究課題/領域番号 |
19H04425
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
瀬川 至朗 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00515413)
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研究分担者 |
乾 健太郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60272689)
牧野 恵美 広島大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (90706962)
関谷 直也 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (30422405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 偽情報 / 誤情報 / ファクトチェック / メディアリテラシー |
研究実績の概要 |
本年は、海外、とりわけ、ファクトチェックが活発におこなわれている近隣の韓国、台湾を中心に、アジアにおける偽情報・誤情報の実情やファクトチェック・システムの現状について調査研究を実施した。具体的には、以下のような訪問調査、セミナー開催(▽韓国ソウル大学SNUファクトチェクセンターの訪問調査(研究協力者=池雅蓉)、▽台湾でのファクトチェック国際会議参加(池雅蓉)、▽SNUファクトチェックセンター長らを招聘してのセミナー開催、▽台湾のメディア状況や偽情報・誤情報対策に詳しい専門家によるセミナーの開催、▽香港の偽情報・誤情報の実情とファクトチェックの取り組みについて研究者を招聘してのセミナー開催)などにより、情報収集と分析を進めた。今後、実効性のあるファクトチェック・システムの研究に取り組む上で、モデルとしての参照が可能になる。 また、アジアの情報に加えて、欧米やアフリカなど他地域の情報については文献調査を中心に収集・整理に努めた。こうした調査研究・文献研究をもとに、世界の偽情報・誤情報の状況と各国のファクトチェックの取り組みの現状をまとめた『ファクトチェック白書』をNPO法人 ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)と共同で作成する作業を進めた(完成は2020年夏予定)。 研究代表者(瀬川至朗)は、学部・大学院の授業の一部にファクトチェック実習を導入し、受講後の学生に対してアンケート調査(無記名)を実施した。ファクトチェックの理解、情報の真偽を見分ける力の向上などの点で、学生からポジティブな回答が得られた。ファクトチェックの学習がメディアリテラシーの向上につながる可能性が示唆された。ただし、これは意識調査の結果であり、実際にメディアリテラシーが向上したかどうかを調べるには実験などの手法を用いる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訪問調査やセミナー開催はほぼ順調に進めることができた。『ファクトチェック白書』は2020年3月の完成を予定していたが、実際には2020年7月末になる見込み。これは、2019年末に新型コロナウイルス感染症が発生、それにつれてデマをはじめとする偽情報・誤情報がSNS上などで大量に拡散しているため、ファクトチェックの実践と研究のリソースを緊急に新型コロナ問題に振り向ける必要があったためである。研究協力者が執筆作業が一時中断するなどの影響は出ているが、あとは残った執筆作業を進めるだけであり、2020年7月までの完成を見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年末に発生が確認された新型コロナの世界的流行により、デマをはじめとする偽情報・誤情報の大量の拡散と同時に国内外のファクトチェックの取り組みが活発化している。偽情報・誤情報とファクトチェック情報ともに他の時期に比べて格段に多く、量的な分析に適していると考えられることから、新型コロナ問題を重要テーマとして取り上げ、、日本で流通した偽情報・誤情報、世界で流通した偽情報・誤情報のそれぞれの特徴を把握しながら、ファクトチェックの実際、有効性と限界、人々の偽情報・誤情報・ファクトチェック情報に対する認識――などについて研究に取り組んでいく。 新型コロナ関連の偽情報・誤情報は、突発的な未知の事象への反応であり、並行して、2017年衆院選、2018年沖縄県知事選、2019年参院選に代表される、政治イベントにおける偽情報・誤情報とファクトチェック情報の研究も進め、実効性のあるファクトチェック・システムの構築につながる知見を得ることに努める。
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