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2020 年度 実績報告書

実効性ある偽情報・誤情報対応策としてのファクトチェック・システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 19H04425
研究機関早稲田大学

研究代表者

瀬川 至朗  早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00515413)

研究分担者 乾 健太郎  東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60272689)
関谷 直也  東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (30422405)
牧野 恵美  広島大学, 学術・社会連携室, 准教授 (90706962)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードファクトチェック / 偽情報 / 誤情報 / 沖縄県知事選挙 / 有効性 / ファクトチェッカー / 非党派性 / 公正性
研究実績の概要

実効性あるファクトチェック・システムの要件を探るため、ファクトチェックの有効性とその限界、そしてファクトチェッカーの選択基準についての研究を進めた。
岡本(2021)は、2018年9月の沖縄県知事選挙のときに行われたファクトチェックについて、関連するツイートデータの分析を実施した。琉球新報社がスペクティ社の協力を得て収集した沖縄県知事選関連ツイートを瀬川が研究目的で提供を受けており、そのツイートデータを分析対象とした。得られた結果から、ファクトチェック記事が有効に機能する条件として、「ファクトチェック主体の知名度や拡散力」など3点が示唆された。また、疑義言説の支持アカウント群と否定アカウント群(ファクトチェック記事支持を含む)はほとんど交じり合っておらず、政治的な分断状況が見て取れた。ファクトチェック情報と対象言説のツイッター上の反応をより正確に把握するには、リツイートを含むデータの分析が求められる。研究グループは沖縄県知事選に関連し、その分析に取り組んでいる。
池(2021)は、近年、ファクトチェック活動が増加している日本と台湾のファクトチェッカーが対象言説をどう選んでいるのか、その選択基準などについて、選挙関連ファクトチェックの分析・調査を実施した。ファクトチェック活動が市民の信頼を得るには「非党派性と公正性」が重要だと指摘されている。その観点から、自民党政権が長い日本と二大政党制の台湾におけるファクトチェックの特徴と課題を考察した。
このほか、新型コロナ感染症の偽・誤情報とファクトチェックの問題に関連して、関谷らは市民の情報受容についてのアンケート調査を実施した。
また、ファクトチェックへのAI導入の世界的潮流を学ぶため、専門家であるスコット・ヘール氏(MEEDANリサーチディレクター)を招いてオンライン研究会(一般公開)を開催し、AI導入の具体的な取り組みを学び、議論した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は、日本などで実際にこれまで取り組まれた選挙関連ファクトチェックの分析・調査を通じて、実効性あるファクトチェック・システムの要件について探索的に明らかにし、示唆を得ることができた。しかし、2020年夏の完成をめざしていたファクトチェック白書は、新型コロナ感染症の急拡大の影響を受けて、完成を延期することとなった。その理由として、①「インフォデミック」といわれるように、新型コロナに関する偽情報・誤情報がソーシャル・メディアなどで大量に拡散し、ファクトチェック白書の執筆担当者(研究協力者)が、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)の国際ファクトチェック・プロジェクトに集中せざるを得ない状況となった、②新型コロナの影響で海外の追加調査が十分にできなかった――などの点を挙げることができる。新型コロナのファクトチェックなど最新の知見を取り入れ、2021年度に完成させる予定である。

今後の研究の推進方策

実効性あるファクトチェック・システムの要件を探るため、2021年度は新型コロナ感染症に関わるファクトチェックの有効性と限界を探る研究に着手する予定である。突発事件において、選挙のファクトチェックとは異なる傾向が見えるかどうかも検討する。
また、日本の偽・誤情報とファクトチェックの実態を把握する一助として、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のクレイム・モニター(Claim Monitor)のデータを整理・分析する。ファクトチェックされやすいタイプの疑義言説、逆にファクトチェックされにくいタイプの疑義言説の特徴などを知る手がかりが得られるかもしれない。
2020年度には、「AIで強化されるファクトチェック」と題するファクトチェック研究会を開催し、繰り返される偽情報・誤情報に対しては、AIを活用したファクトチェック・データベースが効果を発揮する可能性が示された。多くは英語圏におけるデータであり、2021年度は、こうしたAIを利用したファクトチェック・データベースの日本語版を作成し、活用する可能性について検討を進める。
2020年度に新型コロナウイルス感染症と偽情報・誤情報を主テーマに調査を実施した。2021年度も継続して調査を実施する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 新型コロナウイルス感染症への不安と情報行動の関連性2021

    • 著者名/発表者名
      石橋真帆・安本真也・岩崎雅宏・石川俊之・藁谷峻太郎・関谷直也
    • 雑誌名

      災害情報

      巻: 19(印刷中) ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 人類は「フェイクニュース」に負けるのか2021

    • 著者名/発表者名
      瀬川至朗
    • 雑誌名

      Voice

      巻: 519 ページ: 122-130

  • [雑誌論文] いま新聞に何が求められているのか : コロナ報道分析からの考察2020

    • 著者名/発表者名
      瀬川至朗
    • 雑誌名

      生活経済政策

      巻: 285 ページ: 17-22

  • [雑誌論文] メディアはデマとどう向き合うか : 民主主義強化のため積極的なファクトチェックを2020

    • 著者名/発表者名
      瀬川至朗
    • 雑誌名

      新聞研究

      巻: 826 ページ: 24-27

  • [雑誌論文] 新型コロナウイルス感染症拡大初期の情報行動と社会心理2020

    • 著者名/発表者名
      石橋真帆・安本真也・朱沁怡・岩崎雅宏・関谷直也
    • 雑誌名

      東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究・調査研究編

      巻: 37 ページ: 1-72

  • [雑誌論文] コロナ差別・偏見と報道を考える2020

    • 著者名/発表者名
      関谷直也
    • 雑誌名

      月刊民放

      巻: 50(4) ページ: 6-9

  • [雑誌論文] 緊急事態に求められる政府の説明責任とは2020

    • 著者名/発表者名
      関谷直也
    • 雑誌名

      月刊公明

      巻: 174 ページ: 17-23

  • [雑誌論文] インフォデミックにどう立ち向かうのか2020

    • 著者名/発表者名
      関谷直也
    • 雑誌名

      リスクマネジメントTODAY

      巻: 23(2) ページ: 14-17

  • [雑誌論文] 新型コロナウイルスと流言2020

    • 著者名/発表者名
      関谷直也
    • 雑誌名

      健康教室

      巻: 8月号 ページ: 101-104

  • [学会発表] ファクトチェックの効果を探る──2018年沖縄県知事選挙に着目して2021

    • 著者名/発表者名
      岡本太郎
    • 学会等名
      早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所ファクトチェック研究会
  • [学会発表] ファクトチェッカーの選択基準と認識を探る──日本、台湾の選挙ファクトチェック記事を中心に2021

    • 著者名/発表者名
      池雅蓉
    • 学会等名
      早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所ファクトチェック研究会
  • [学会・シンポジウム開催] ファクトチェック研究会「AIで強化されるファクトチェックでCOVID-19に立ち向かう Combating COVID-19 and Empowering Fact-checkers with AI」2021

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公開日: 2021-12-27  

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