研究課題
芸術作品に感じられる美や対人魅力の処理過程や評価の形成過程における意識性に着目し,美や魅力の評価に影響を与えうる刺激の潜在性や無意識性について,実験心理学的研究と脳波やfMRI等の脳機能画像研究を中心に検討することが本研究の目的であった。第1年目となる2019年度は,実験心理学的研究の展開と脳機能画像研究の準備期間として,研究を遂行していった。主に,評定法による顕在評価実験,潜在連合テスト(IAT),さらに視線計測実験を実験の軸として据え,モザイク状パタン,絵画画像や写真を刺激素材とした検討を行った。特にIATを用いた研究では,ウィーン大学との共同研究として実施しているモザイク状パタンを用いた研究では顕在評価と潜在評価との関係を日欧で比較した研究を実施し,現在論文を執筆中である。さらに,モンドリアン絵画をパタン化して刺激として用いた研究では,顕在評価,IATによる潜在評価だけでなく視線計測を用いた研究,さらには知覚される重心位置に関する研究と一連の研究を展開することができ,経済的に美しいと評価する過程に,方位(向き)のバイアスが生じている可能性があることを指摘する研究を実施することができた。その他,顔画像を用いた研究では,顔からその人物のパーソナリティを顔の形態から推定するバイアス過程が検討できた。
2: おおむね順調に進展している
実験心理学的研究を中心に当初の目的の通りの研究を進めることができている。また,脳波やfMRI研究についても研究実施の目処が立ち,その準備を進めている。
実験的研究としては,2019年度の実験研究をさらに展開し,特にContinuous Flash Suppression(CFS)を実験パラダイムとした実験により,評価そのものの意識性・無意識性について検討する予定であり,既にその準備を進めている状況にある。その際,無意識的処理における眼球運動を検討し,美的意識にのぼる前の視覚行動について明らかにする。また,脳波やfMRIについても,課題非関連脳活動等を探ることで検討する予定である。同時に,2019年度に実施した研究について学会発表や論文化を行い,国内外に情報を発信していく予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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