研究課題/領域番号 |
19H04432
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70347079)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 美的意識 / 連続フラッシュ抑制 / 心理物理 / 方法論 |
研究実績の概要 |
人がいかにして美を感じるかという人間性に関わる根源的な問題は,近年,心や脳の働きや機能の問題として捉えられるようになり,急速な展開を遂げている。本研究では,「美しさ」の視覚的意識として価値表象に至る時間的過程について,意識に到達する前段階の無意識的処理過程と,美しさの意識化に影響を与える無意識的影響過程について検討することであった。特に,心理物理実験や脳機能計測等を通して,美が顕在的に意識に至るまでの時間的過程とそれに影響を与える諸要因の因果的過程について,それぞれを無自覚的過程(潜在的,暗黙的)と閾下過程とに切り分けて検討することを目的とした。2020年度の繰越分は,本研究の中心課題であった連続フラッシュ抑制による美的評価が潜在的に対象の意識化過程にどのように影響を及ぼすかについて,心理物理実験による検討のための予備検討を行った。そのための連続フラッシュ抑制パラダイムを用いた提示アプリケーションの開発と,その妥当性に関する心理物理実験を通した検討を行った。ヘッドマウントディスプレイを用いたアプリケーション開発では,表情検出が閾下過程で生じることについて簡単な検出課題で確証し,閾下の潜在的提示方法でも,視覚的に意識することはできないが,その刺激が脳に入力され,知覚的判断に影響するプロセスを確認することができた。これにより,無意識過程を明らかにする方法論の確立は本研究を進展させる上で非常に重要なものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響により,本研究にかかる心理物理実験を進めるのに難航したが,2020年度の内容については2021年度に繰越て実施することで,その遅れを取り戻すことはできた。ただし,当初の予定であった脳機能計測にまでは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
繰り越し分について,本研究の中心課題である心理物理実験は,2021年度に実施し,完了した。2021年度の計画としては,2020年度の繰越し分で開発した,閾下での潜在知覚下での刺激提示システムを利用し,潜在知覚された絵画画像等に感じる美しさが,刺激検出に与える影響について検討することであった。
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