研究課題
人がいかにして美を感じるかという人間性に関わる根源的な問題は近年,心や脳の働きや機能の問題として捉えられるようになり,急速な展開を遂げている。本研究では,「美しさ」の視覚的意識として価値表象に至る時間的過程について,意識に到達する前段階の無意識的処理過程と,美しさの意識化に影響を与える無意識的影響過程について,心理物理実験や脳機能計測等を通して,美が顕在的に意識に至るまでの時間的過程とそれに影響を与える諸要因の因果的過程について,それぞれを無自覚的過程(潜在的,暗黙的)と閾下過程とに切り分けて検討することを目的とした。2021年度は,本研究の中心課題であった連続フラッシュ抑制による美的評価が潜在的に対象の意識化過程にどのように影響を及ぼすかについて主に心理物理実験を通して検討を行った。それとともに,視覚刺激の無意識的処理と意識化過程との関係を明らかにするための心理物理的手法としての連続フラッシュ抑制パラダイムを簡便に行うための方法論をヘッドマウントディスプレイを用いた提示アプリケーションとして開発し,その手法を確立した。実験的研究を通して,視覚刺激とした絵画画像の美しさが高いほど,無意識下である時間中にその絵画に視線が集まっていることを明らかにした。このことは美しさがその画像の物理的特性の意識化過程とは独立し,評価がたとえポジティブなものであったとしても潜在的に先行し,おそらく刺激の特徴分析処理と並行して生じ,意識化過程へと統合されることを明らかにすることができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts
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